NTTドコモ子会社のコンサルティング会社、ドコモ・ドットコム(東京・千代田区)は2008年11月、約3500人に携帯電話向けサイトの利用実態を聞いた「ライフスタイル別iモードユーザー利用実態調査」の結果を発表した。その結果を基に、ドコモ・ドットコムの村上勇一郎・ビジネス開発部マネージャーに利用者動向に応じた企業のIT・ネット部門の対応策について話を聞いた。

(聞き手は、清嶋 直樹=日経情報ストラテジー


携帯サイト利用者の絶対数はまだ少ない。購買力の低い若年層の利用が多いイメージもあり、携帯サイトに注力していない企業が多い。

写真●携帯サイトに詳しいドコモ・ドットコムの村上勇一郎ビジネス開発部マネージャー

 確かに全世代で見るとメディア接触時間に占める携帯とパソコンの比率は1対2程度で、携帯サイトの影響力はパソコンサイトに劣る。こうしたデータから、携帯サイトへの投資を軽視する判断がなされることがある。40~60代の購買層が携帯電話での情報収集になじみがないという事情もある。

 しかし、若い世代ほど携帯サイトへの接触時間は長い。例えば10代女性だけで見ると、携帯対パソコンが4対1程度と比率が逆転する。現在は学生でも数年後には社会人になり、今後購買力をつけていくことに留意する必要がある。

 Yahoo! JAPANの携帯トップページへのアクセス数は、ここ2年で約90倍になった。パソコンサイトの利用者数は飽和しつつあり、今後伸びしろが大きいのは携帯サイトのほうだろう。

携帯サイトの利用が増えると、テレビなどの既存メディアの影響力は低下するのか。

 それは大きな誤解だ。携帯・パソコンを問わず、ネット上の話題のほとんどはテレビ番組の感想や、新聞や雑誌が報じたニュース記事に関するものだからだ。

 同じネットでも、携帯の場合は“ながら視聴者”が多いという特徴がある。テレビを見ながら気になったことを携帯の検索エンジンで調べるというわけだ。携帯はどこにでも持ち歩けるので、街頭広告などを見て携帯で調べるという人も多い。

 逆に企業側から見れば、携帯ネットは何らかのきっかけがなければアクセスされないメディアだと言える。テレビCMや街頭広告などでブランド名を見て、それに対してアクションを取る携帯利用者に対する受け皿を用意する必要がある。

 そのためには、携帯サイトを用意するのはもちろん、検索エンジンでヒットするためのSEO(検索エンジン最適化)対策をするべきだ。パソコンサイトのSEOでは2大検索エンジンであるヤフーとグーグルへの対策が基本だが、携帯サイトの場合は、NTTドコモ、au、ソフトバンクの公式検索エンジンも含めた5つの検索エンジンへの対策が不可欠になる。

既存メディアと携帯メディアは共存するのか。

 それはやり方次第だろう。私は出版社と共同で、携帯コンテンツ制作にかかわったことがある。例えば、写真週刊誌の場合、本誌に掲載しているものとは異なる別の写真を掲載することで、有料コンテンツ料金収入を得ながら、本誌の販促にもつなげられた。

 制作費のかかるコンテンツを、携帯だからと言って無料で出してはいけない。無料で出せば、有料の雑誌などを誰も買わなくなる。昔、音楽のネット配信が始まった時に「1曲500円」などCDよりも高い値付けについて「これじゃ誰も買わない」という声が支配的だった。しかし今から考えると、高い価格から始めてだんだん下げていく音楽業界のやり方は正解だったと言える。