
>>前編
海外戦略はどのように考えているのか。
今後も契約数を伸ばすとなれば海外しかない。海外には積極的に進出したいと考えている。ただ,例えば現地の通信事業者を買収して統制するのは容易ではなく,出資や提携が中心になる。その際の基本は,シナジー(相乗効果)をどれだけ高められるか,つまり当社と提携先の両方に役に立ち,互いにWin-Winの関係を築けることが前提になる。実際,フィリピンのPLDTや韓国のKTFとは良好な関係を築いている。出資比率はともに20%未満だが,例えばKTFとは機器を共同で調達したり,ほかの通信事業者に共同で出資したりしている。
もちろん本格的に進出するのであれば51%以上の出資比率が必要だが,現地の規制もあり一気に買収までたどりつけないのが実情だ。ただ,どこの国も規制緩和の方向に動いている。規制が緩和されたり,提携先に売却の意向があれば,出資比率を高めることはやぶさかではない。
では,どこの国に進出するかといえば,やはりアジアが中心になる。ほかの国に進出する意向が全くないわけではないが,優先順位の問題になる。
米グーグルのAndroidをはじめ,端末プラットフォームのオープン化が進んでいる。オープン化の動きをどう取り込んでいくのか。

当社はグーグルを中心とした「OHA」(Open Handset Alliance)のメンバーに入っており,Android端末は2009年前半に投入する予定だ。今後はスマートフォンを中心にオープン・プラットフォームの動きが進み,いわゆる従来の“携帯電話”が,あるときからオープン・プラットフォームになるかもしれない。
ただ,ユーザーがアプリケーションを自由にインストールするようになると,セキュリティの問題が浮上してくる。仮にウイルスに感染してしまった場合は通話できなくなる可能性があるため,セキュリティの問題はしっかり考えなければならない。いずれにせよ,オープン・プラットフォームは今後の一つのキー・テクノロジになると誰もが思っている。これを取り込むことで,セキュリティをはじめとした新たなサービス展開を期待できる。
オープン化が進めば,iモードの利用が減ることが予想される。携帯電話事業者のビジネスを脅かす動きと見ることもできる。
極論すればそうかもしれないが,必ずしも「all or nothing」となるわけではない。オープン化の動きが進んでも,公式サイトは生き残ると見ている。
要はユーザーがどちらを使いやすいと感じるか。現時点ではiモードの方が確実に使いやすい。勘違いしてほしくないのは,我々がオープン化の動きを敵視しているわけではないということ。我々は「お客様第一」。ユーザーがオープン化を望めば,それはそれで構わないと考えている。
山田 隆持(やまだ・りゅうじ)氏
(聞き手は,松本 敏明=日経コミュニケーション編集長,取材日:2008年9月30日)