NTTドコモは,書いた文字をリアルタイムでデジタル化するスウェーデンのアノト社の「デジタルペン」と携帯電話を組み合わせたユニークなASPサービス「MobilePenサービス」を開発し,2008年9月に提供を始めた。このサービスを開発した狙いなどについて担当者に話を聞いた。
今回のサービスを開発するきっかけは,どのようなものだったのでしょうか。
もともとデジタルペンについては,4~5年前から着目していました。そのころからリサーチを始めたり,デジタルペンを使ったソリューションを個別企業へ提案したりしていました。
ここにきて,Bluetooth対応携帯電話機とのインタフェースの開発も進んだこともあり,お客さんに提案できるレベルにコストを下げられるASPサービスとして提供することにしました。
今回のASPサービスは,どういう仕組みで動作するのですか。
デジタルペンでは専用の紙を利用します。この紙には文字の位置や形状を把握するために格子状のドットが打ってあります。これはスウェーデンのアノト社が開発した技術です。
デジタルペンで使う専用紙には,0.3mm間隔でドットが印刷されています。ドットは,格子の交点からわずかにずれていて,そのずれのパターンが座標情報になります。
デジタルペン本体の先にはカメラが付いており,ペンで手書きしたときにドットを読み取り,座標情報としてデジタル化されます。ペンはキャップを空けたときに動くので,キャップを付けていれば放電して電池が切れることはありません。
それを申し込み用紙などとして利用するために,デジタルペンの専用紙に印刷する必要があります。用紙にどのような項目を書くか,どのようなレイアウトにするか,どの部分をテキスト・データに変換するか,といった様々な設定項目を聞きます。
これが見本の用紙です(写真1)。この枠の部分を数字に変換するのか,あるいは日本語にするのか,などを個別に設定していきます。
そのような設定に従って,利用者がデジタルペンで書いた文字をサーバー側で変換します。そして,サーバーでどのように変換したのかを携帯で確認します。携帯のちっちゃな画面で見るので,申し込み用紙全体を確認するためには,何度か画面遷移が必要になります。そこで,どのように画面遷移するのかも,あらかじめ聞いておいて設定しておきます。
それらの設定に従って印刷するためのPostScriptファイルを作ります。そのファイルをお客さんに渡します。
実際に使うときは,どのようにするのでしょうか。
まず申し込み用紙の記入欄にデジタルペンで書き込みます。
書き終わったら,携帯電話機のiアプリを立ち上げて,待機中にしておきます。そして,用紙の右下にあるチェック・ボックスにデジタルペンでチェックを入れます。
チェックを入れると,デジタルペンに記録された座標データがBluetoothで携帯電話機に送信されます。さらにiアプリが携帯電話機から当社のASP用サーバーに座標データを届けます。
サーバー上には文字変換エンジンがあり,紙の上の文字を文字データに変換します。サーバーは,その変換結果の文字を携帯電話機に返します。ユーザーが手元の携帯電話機で変換結果を確認できるわけです(写真2)。
ここまで完了すると,出先の営業担当者の作業は完了ということになります。オフィスに紙を送らなくてもよいし,オフィスに戻ってパソコンに打ち込んだりする必要もなく,直帰できることになります。
このサービスのメリットは,どこにあるのでしょうか。
1番目に,簡単な操作性があります。当社では,携帯電話機でいろいろな方法の情報入力を扱ってきました。でも,やはり誰でも使える簡単な方法は「紙に書くだけ」です。誰もが昔から利用している方法です。
2番目に,スピードアップで業務の効率化が図れることです。紙を郵送したりFAXを送信したりする手間に比べて,瞬時に内容を送信できます。
3番目に,ペーパーレス化によるセキュリティ向上です。持ち運ぶ情報が多くなればなるほど情報漏えいのリスクが高くなります。例えば,出先の人が申し込み用紙をいったん持ち帰って翌日会社に持ってくると,その過程で盗難や紛失の恐れが出てきます。デジタルペンを使ってペーパーレス化すれば,盗難や紛失を防止し,セキュリティ向上につながります。