写真●アイパス ジャパン アジアパシフィック地域 ビジネスデベロップメント担当の仁木徹也ディレクター(左)と,IIJ 営業本部 マーケティング企画開発部の三木庸彰課長(右)
写真●アイパス ジャパン アジアパシフィック地域 ビジネスデベロップメント担当の仁木徹也ディレクター(左)と,IIJ 営業本部 マーケティング企画開発部の三木庸彰課長(右)
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インターネットイニシアティブ(IIJ)と米iPass(アイパス)は2008年8月,モバイル・データ通信サービスで提携することを発表した(関連記事)。IIJのモバイル・データ通信サービス「IIJモバイル」を,アイパスのサービス・メニューとして提供する。「IIJモバイル」は,IIJがNTTドコモ,イー・モバイルの回線を利用し,MVNO(仮想移動体通信事業者)として提供するデータ通信サービスだ。IIJ 営業本部の三木庸彰課長と,アイパス ジャパンの仁木徹也ディレクターに提携の目的や,提供サービスの特徴を聞いた。(聞き手は田村 奈央=日経コミュニケーション

今回の提携の目的は。

仁木氏:アイパスは企業ユーザー向けにインターネットやイントラネットへのアクセス・サービスを提供している。ただし,自社ではアクセス系のネットワーク・インフラを持たない。ISDN,無線LAN,HSDPA,EV-DOなど各種のインフラを持つ世界160カ国以上の通信事業者と提携して,ユーザーに必要なアクセス・サービスをまとめて提供する,一種の「回線アグリゲータ」だ。

 今回のIIJとの提携もこの事業の一環で,日本国内でのサービス・ラインアップを強化するのが狙い。最近では,国内外問わずEV-DOやHSDPAといった第三世代携帯電話を使ったデータ通信の需要が伸びている。アイパスは,国内では以前からKDDIのデータ通信(EV-DO)をサービス・メニューの一つとして提供してきた。今回,「IIJモバイル」を新しくサービス・メニューに追加することで,アイパスのユーザーはEV-DOだけでなく,2社のHSDPAデータ通信サービスを選択できるようになる。

三木氏:IIJとしては,アイパスを通じて自社ではリーチできない企業に「IIJモバイル」を販売できるというメリットがある。例えば海外企業の日本支社などには,グローバルでサービスを提供しているアイパスの方が強い。

アイパスではどのような形態で「IIJモバイル」のサービスを提供するのか。もう少し具体的に教えてほしい。

仁木氏:アイパスでは無線LAN,HSDPA,EV-DOなどの中から,企業ユーザーが自社に必要な接続サービスを組み合わせて導入できる「iPass Mobile Office」というソリューションを提供している。「IIJモバイル」はこの「iPass Mobile Office」のメニューの一つとして選択できるようになる。ユーザーのパソコン側には「iPassConnect クライアント ソフトウェア」という専用アプリケーションをインストールしておけば,複数の事業者が提供する多様なネットワーク・インフラに,同じユーザー・インタフェースから接続できる。

日本市場における,今後のモバイル・ブロードバンド・ビジネス展開の予定は。

仁木氏:まず,引き続き「iPass Mobile Office」のサービス・メニューを広げていく。LTEやWiMAXなどの新しい技術にも積極的に対応していきたい。

 また,当社ではここ数年,単に「回線アグリゲータ」としてアクセス・サービスを提供するだけでなく,セキュリティ関連のソフトウエア・サービスにも力を入れている。例えば「外出先からノート・パソコンで社内ネットワークにリモート・アクセスする際に,そのパソコンが規定のセキュリティ・ポリシーを満たしているか判断してから接続を許可する」といったセキュリティ・サービスがある。ノート・パソコン側に専用のクライアント・ソフトを導入しておけば,ユーザーの社内ネットワークに特に手を加えなくても良い。今後はこうしたセキュリティ・サービスを拡充していく。

三木氏:「IIJがMVNOとして提供するデータ通信サービスを,さらに他社に提供する」というケースは,今回のアイパスで2件目。今後もこうした形の提携を増やして,販売経路を拡大していきたい。