米ヴイエムウェア アジア太平洋地域担当 競合製品マーケティング スペシャリスト スティーブン・グロス氏
米ヴイエムウェア アジア太平洋地域担当 競合製品マーケティング スペシャリスト スティーブン・グロス氏
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 「仮想化」市場をけん引する米ヴイエムウェア。それを追撃する米マイクロソフトは2008年6月26日(米国時間),「Windows Server 2008」向け仮想化テクノロジ「Hyper-V」の正式版を公開した。1台のサーバーを仮想化して、複数のサーバーを統合する用途などに使える。こうした機能を提供する「サーバー仮想化ソフト」の代表格が米ヴイエムウェアの「VMware ESX」だ。続々と登場する競合製品は、ヴイエムウェアの牙城を切り崩すのか。米ヴイエムウェアのアジア太平洋地域担当で、競合製品の動向に詳しいスティーブン・グロス氏に聞いた。

(聞き手は森山 徹=日経コンピュータ

Hyper-Vはヴイエムウェアにとってどれほどの脅威か。

 マイクロソフトがWindows Server 2008に仮想化テクノロジを統合したことは、その方向に未来があることを示している。今、仮想化の用途はサーバー統合が中心だが、それは第一歩にすぎない。仮想化をやりはじめたユーザーは統合だけではなくもっと様々なことに使えると気づく。そうした分野では仮想化機構である「ハイパーバイザー」に加え、その上のITサービスが必要になるが、Hyper-Vでは限界がある。

 Hyper-VとVMware ESXを比較するときは、互いのハイパーバイザーの部分を比べるべきだ。サーバー仮想化ソフトの基礎であるハイパーバイザーは、ヴイエムウェアは長年にわたる実績がある。また、VMware ESXはハイパーバイザーに加えて、自動化やディザスタ・リカバリ、仮想サーバーの管理機能といったITサービスを提供する。一方、Hyper-Vはハイパーバイザー部分の最初の世代を投入したばかり。しかも、その上のITインフラを管理するためのITサービスは出せていない。両者を比較するなら「リンゴとリンゴ」で比べてほしい。

 またデータセンターの運用では、VMware ESXが備える仮想マシンをオンライン状態で移動する「ライブ・マイグレーション機能」が欠かせない。ところがマイクロソフトはエンジニアリングの問題から「ライブ」ではなく「クイック・マイグレーション」の提供にとどまる。VMware ESXでは、仮想マシンの移動時にコネクティビティが失われることはないが、クイック・マイグレーションはOSを停止する必要がある。Hyper-Vは、管理ツールも弱い。マイクロソフトには「System Center」という管理ツールを提供するが、これは五つの別製品を集めたもの。ヴイエムウェアが統合的に行っていることを五つでやっている。

ヴイエムウェアの強みはどこにあるのか。

 ヴイエムウェアはデスクトップからサーバー統合、データセンターの管理などあらゆる規模の仮想化をカバーできている。すべての分野でユーザーはヴイエムウェアの強みを感じていると思う。ヴイエムウェアのアドバンテージは五つにまとめられる。(1)堅牢性、(2)真にダイナミックなIT、(3)仮想化の完全な管理、(4)ITインフラ全体へのサポート、(5)実証済みのプラットフォームだ。過去10年間、仮想化技術に特化してきたからこそ、多くのユーザーに支持されている。

 もう一つ、仮想化のコストについて触れたい。ヴイエムウェアのソリューションは高価だといわれることがある。その比較方法を見ると、一般的なサーバーに仮想化ソフトのコストを加え、Windowsのライセンスなどをのせて、そこでヴイエムウェアは高いと結論づけている。ところが、VMware ESXはHyper-Vの2倍は仮想マシンが搭載できるので、仮想マシンごとの価格が安くなる。仮想マシンの単価に注目してほしい。また、仮想化をうまく運用するには、初期コストだけを見ていてはダメでTCOを比較する必要がある。

ITサービスを持っているシトリックスをどう見るか。

 シトリックスは、アプリケーションのデリバリー・ソリューションに強みがある。シトリックスのXenServerは、オープンソースのXenをベースにしている。Xenは管理機能が未成熟で、ほとんどの管理はコマンドラインで行う。管理面ではXenServerの成熟度は高い。しかし、シトリックスとマイクロソフトの提携関係が深いので、将来的にHyper-Vに統合されるのではという憶測が飛んでいる。

続々と投入される仮想化ソフトとの違いは。

 ヴイエムウェア以外のベンダーの多くは、自分たちのアプリケーションを売ろうとして仮想化をやっている。そのため、自社のOSやアプリケーションを仮想化ソフトにくっつけて提供する。例えばオラクルは、自社製品の仮想化は、自社の仮想化ソフト「Oracle VM」でしかサポートしないという。しかし、Oracle VM上でWindowsを動かしたとき、そのパフォーマンスは悲惨なものだろう。マイクロソフトもHyper-Vを使うにはWindow 2008 Serverが必要だという。これらの製品は、いわばポイント・ソリューションだ。

 もちろん、いくつかのポイント・ソリューションを併用することも考えられる。しかし、複数の技術を持った人材を抱える必要がある。さらに製品の契約書は別々、サポートも別々になり、頭痛のタネが増えるだけだ。VMware ESXであれば、どんなOSやアプリケーションもサポートできる。仮想環境のベンダーは一つで済むし、トレーニングも一つで済む。