写真●アクセンチュア 代表取締役 程近智氏
写真●アクセンチュア 代表取締役 程近智氏
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国内ではこれまでM&A(合併・買収)に慎重な姿勢をとってきたアクセンチュアが、中堅システム・インテグレータのソピアを買収。4月30日に全株式の取得を完了した。ソピアは日本オラクルの業務アプリケーション製品のコンサルティングとSIに強みを持つ企業だ。買収の狙いと今後の展開について、程社長に聞いた。(聞き手は、桔梗原 富夫=日経コンピュータ

この時期にソピアを買収した狙いは。

 アクセンチュアはSIとアウトソーシングを強化している。大きな流れとしてはSI力強化の一環だ。ソピアは日本オラクルのERP製品のコンサルティングとSIに定評がある。Oracleデータベースの技術力も高い。M&Aの狙いとしては一般に、スケールの拡大、スキルの獲得、地域進出の3つがある。今回は、スキルを買ったということだ。

これまでアクセンチュアは国内ではM&Aを手掛けてこなかった。

 我々はコンサルティング・ビジネスを通じてM&Aの困難さをつぶさに見てきた。製造業の場合は生産設備を統合するなど、M&Aの効果が表れやすいが、ITサービス業界は人ベースのビジネスなのでシナジーを出すのが難しい。買収した途端に、人が去ってしまうといったことも起こり得る。ただし、全く否定していたわけではなく、国内でも2005年ころからM&Aを戦略として検討してきた。

ソピアとはなぜうまくいくと判断したのか。

 ソピアとは以前から仕事上の付き合いがあり、「個人を尊重する」という企業理念は当社と共通すると思っていた。それで我々のほうから声をかけ、今回の買収に至った。

企業買収に伴うリスクを回避しようと思ったら、案件単位でパートナー契約を結ぶだけでもよいのではないか。

 アクセンチュアには手掛けたプロジェクトについては自らきちんと責任をとるという、企業文化がある。それにはコア人材を中に取り込まないと難しい。

アクセンチュアはこれまでERPビジネスに消極的だった印象がある。それを変えるということか。

 消極的に見えていたとしたら残念だ。村山徹・前社長(現会長)の時代からERPには力を入れてやってきている。ソピアを買収したことによって、中堅企業向けのERPビジネスを強化したいという思いはある。これまでERPユーザーは大手製造業が中心だった。グローバルで戦う大手製造業と取り引きする中堅企業では今後、ERPの導入が進むだろう。

ユーザー企業のIT投資意欲が減退しているようだ。今後のIT投資動向について、程社長はどう見ているか。

 大手ITベンダーのトップが2008年のIT投資を楽観視するなかで、私は昨年時点で厳しくなることを指摘してきた。ただし、すべての企業がIT投資を削減しているわけではなく、増やしている企業もある。ビジネスを革新していくうえで、IT投資は不可欠であり、日本企業はこれまで以上に“メリハリ”をつけたIT投資マネジメントが求められる。