総務省は2008年4月、通信事業者によるフェムトセルを活用したサービスを今秋に解禁する方針を示した(関連記事)。フェムトセルとは、超小型の携帯電話基地局のこと。ユーザー宅のブロードバンド回線に接続するだけで、簡単にユーザー専用の携帯電話基地局を設置できる。通常の携帯電話端末を利用しながら、携帯電話と固定通信を融合したサービスを提供可能にする点が特徴だ。フェムトセル・サービスを実現するための通信事業者向けアプライアンスを扱う米ソナス・ネットワークス ワイヤレス・ソリューションズのオスマン・パークソイ プロダクト・マネージャーに、フェムトセルへの取り組みを聞いた。

(聞き手は白井 良=日経コンピュータ



ソナス・ネットワークスは、フェムトセル分野でどういった製品を扱っているのか。


米ソナス・ネットワークス ワイヤレス・ソリューションズのオスマン・パークソイ プロダクト・マネージャー
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 2008年2月に「mobilEdge」(モバイルエッジ)と呼ぶ製品を発表した。携帯電話事業者のコア・ネットワークのエッジに置くアプライアンスで、トラフィックをフェムトセルと屋外基地局で振り分ける役割を果たす。mobilEdgeを使うことで、ユーザーの現在位置に応じて接続先を屋外基地局とフェムトセルで自動的に切り替えるようにできる。

 製品の特徴は、IPコア・ネットワークとの親和性だ。フェムトセルを使ったサービスでは、極めて大容量のトラフィックが流れるようなものも想定されている。そのため、低コストで大容量のトラフィックを扱えるIPベースのIMS(IP multimedia subsystem)コア・ネットワークの構築が必要になる。mobilEdgeは、IMSコア・ネットワークを前提とした製品だ。フェムトセルの導入と同時に、IMSコア・ネットワークを構築しやすいようにしている。

 mobilEdgeからユーザー宅のフェムトセル基地局までは、ADSLや光ファイバなどのブロードバンド回線で接続する。つまり、フェムトセルのサービスで流れるトラフィックはすべてIPで処理される。そのため、mobilEdgeの設置場所はサービス・エリアに依存しない。また、mobilEdgeは最大64万ユーザーを1筐体でサポートできる。全国でサービスする場合でも、特定のデータセンターに集約して設置すればいい。

フェムトセル基地局は扱っていないのか。

 我々はコア・ネットワークのエッジ設備が本業だ。フェムトセル基地局は他社の製品を利用する。すでに英アイピー・アクセスとは提携済みで、互いの製品を接続できるようにしている。今後、業界団体の「Femto Forum」などで接続仕様が標準化されてくれば、様々なメーカーの機器を接続可能にできるだろう。

ユーザーにとって、フェムトセルの導入はどのようなメリットになるのか。

 まず、屋内でのカバー・エリアが広がるということがある。付加的なサービスとしては、ユーザーの現在位置に基づいたサービスがある。フェムトセルに接続しているかどうかで、通信事業者はユーザーが自宅に居るか居ないかが分かる。例えば、外出中に固定電話にかかってきた電話を自動的に携帯電話に転送するサービスなどが考えられる。

 企業や大学では「フェムト・ゾーン」という形で、建物や敷地全体をフェムトセルの配下として扱うことも考えられる。この形ならば、建物内や敷地内の通話を無料にすることも可能だろう。従来からも同様のことを無線LANを使って実現するソリューションはあったが、フェムトセルは今の携帯電話機をそのまま使える点がメリットだ。