スウェーデン エリクソンは2008年2月5日(欧州時間)に大手パソコン・メーカーの中国レノボとHSPA(high speed packet access)モジュールのノート・パソコンへの組み込みに関して提携したと発表した。この提携の狙いや今後の展開をエリクソンのプロダクト・エリア・エンべデッド・モジュールズ,プロダクト・マネジメント長のマグナス・クリスターソン氏に話を聞いた。


(聞き手は中道 理=日経コミュニケーション



今回の提携について詳しく教えて欲しい。

写真1●エリクソンのマグナス・クリスターソン氏
写真1●エリクソンのマグナス・クリスターソン氏
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写真2●レノボに提供するPCI Express Mini Card規格のHSPAモジュール
写真2●レノボに提供するPCI Express Mini Card規格のHSPAモジュール
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 エリクソンのPCI Express Mini CardのHSPAモジュールをレノボのノート・パソコンに搭載して販売することが決まった。このモジュールは,HSPA,WCDMA,GSM,GPRSの通信機能とGPSの機能を持つ。製品は2008年中ごろに市場に出てくる予定だ。

 今後エンタープライズのノート・パソコン,コンシューマ向けのノート・パソコン,そしてカー・ナビゲーションシステムやゲーム機などのコンシューマ・エレクトロニクス製品がHSPAのネットワークにつながり始めると見ている。既にそうした傾向は出てきているが,2008年はいっそう加速していく。2011年までに,HSPAモジュールを新しく出荷するノート・パソコンの50%に搭載されるようになるだろう。

 提携は,この分野での地位を確固たるものにするためのものだ。レノボ以外は名前を明かせないが,パソコン・メーカー上位7社のうち3社と提携に合意している。他社とも継続協議中だ。

既に無線LANがあるがこれとは競合しないのか。

 これまではノート・パソコンなどをワイヤレスでつなぐといった場合,無線LANしかなかった。ところが無線LANはカバレッジが狭い。インターネットにつなごうと考えると,いわゆる「ホットスポット」を探してそこまで移動しなければならない。HSPAなら携帯電話網を使うので煩わしさはない。既にスウェーデンでは月額30ドルで下り7.2Mビット/秒のサービスが使い放題だし,英国では20ドルで1Gバイトまでダウンロード可能なサービスも始まっている。

 速度の面でもどんどん高速化していく。現在の技術では下り最大14.4Mビット/秒だが,2009年には42Mビット/秒,そして20MHz幅のLTE(long term evolution)がやってくれば158Mビット/秒まで高速化できる。

HSPAモジュールがノート・パソコンに入ることで,遠隔地からの管理が容易になると思うが。

 その通りだ。そうしたニーズが企業や通信事業者にあるのは承知している。例えば,パソコンに対して管理者が遠隔地からコマンドを送って,最新セキュリティ・パッチを適用したり,盗難の際に遠隔地からハードディスクの内容を消去したりということが考えられる。

 これを実現するためには,HSPAモジュールとパソコン側両方での対応が必要だ。パソコンの電源が落ちていても,モジュールの電源が供給される仕組みや,不正なパケットによって意図しない動作をしないような仕組みを整備しなければならない。

 そこで,パソコン・メーカーとどうやって実装できるかを研究している。どういう実装になるのかは,現時点では話せない。

HSPAモジュールが入ったパソコンはどのように流通させるのか。

 今までどおり量販店で購入し後からアクティブにする方法や,携帯電話のように店頭で回線とセットで販売する方法があるだろう。実際,スウェーデンでは,携帯電話事業者がそのショップでパソコンを販売している。パソコンの値段は24カ月の契約でなんと1クローネ(12円程度)だ。

今後の計画は。

 コンシューマ・エレクトロニクスの分野に向けて現在の半分のサイズのものをなるべく早く提供したい。また,事業者のネットワークの高速化に合わせて,モジュール側も高速化していく。価格も安くする努力もする。ただし,モジュールの価格については,外部に公表していないので,教えられないが。