多国籍企業のネットワークのハブとしての地位を固めつつあるシングテル(シンガポール・テレコム)。世界的にNGN(次世代ネットワーク)構築への取り組みが進むなか,シングテルはどんな戦略を描いているのか。日本市場でのプレゼンスを高めるための取り組みについて,グローバル・マーケット&ホールセールCEOのサンジブ・アイヤ氏に聞いた。

(聞き手は,河井 保博=日経コミュニケーション



国際キャリアとして成功している理由は何だと考えているか。

シングテル グローバル・マーケット&ホールセールCEO サンジブ・アイヤ氏
シングテル グローバル・マーケット&ホールセールCEO サンジブ・アイヤ氏
[画像のクリックで拡大表示]
 一つは自社で国際回線を敷設し,アジア太平洋地域でのコネクティビティを確保していることだ。自国以外へのコネクティビティを求める多国籍企業に対し,ネットワークのハブとしてサービスを提供できる。

 もう一つはアジア各国に拠点,あるいはパートナを持つことだ。オーストラリアのオプタスを買収したが,そのほかにもインド,インドネシア,フィリピンなど各国の通信事業者に出資したり,合弁会社を設立したりしている。それぞれのリージョナル・プレーヤにシングテルが培ってきたオペレーションのノウハウを伝えることで,高品質のサービスを提供できるようにしていく。

 日本でも同様にサービスを展開できると思っている。回線提供はもちろん,ネットワーク管理,セキュリティ強化やネットワーク性能の向上を目的としたマネージド・サービス,IPセントレックスなど,エンド・ツー・エンドのサービスを提供していく。既に日本に東京・大阪の2カ所にセールス・オフィスを設置済みで,今後さらにセールス・カバレッジを広げようとしている。日本の通信事業者と連携することも考えている。

シンガポール国内のサービスへの取り組みは。

 シンガポール国内のサービス強化も進めている。重要なテーマは,最近サービスを始めたIPTVとモビリティだ。IPTVなどのコンシューマ・サービスについては,コンテンツを充実させ,広告収入を得られるようにする。リテンション(既存顧客の維持)の効果もある。

 コンシューマ・サービスは,シンガポールとオーストラリアの国内に閉じたサービスだ。例えば日本ではエンタープライズ向けにサービスを提供する。

 ただ,コンテンツを集めるという点では日本をはじめとする各国のコンテンツ・プロバイダと手を組める可能性はある。既に案件は来ている。アジアのコンソリデータになれたらいいと思っている。

NGNへの取り組みについてはどう考えているか。

 もちろん考えている。今,シンガポールでは政府が「NBN」(National Broadband Network)というプロジェクトを進めようとしている。FTTHを含め,シンガポール国内のブロードバンド環境を整備しようという試みで,シングテルもプロジェクトに参加している。

 シングテル自身,国際間のMPLS(multi protocol label switching)などアジアのネットワークをIPベースのNGNにしていく方針だ。マネージド・サービスもNGNに合わせたものにする。オペレーション面でも,体制を整えていくつもりだ。NBNもシングテル自身の国際ネットワークのNGNもゴールは同じだ。

NGNの完成はいつくらいになりそうか。

 国のプロジェクトであるNBNにかかわる話になるので,現時点では具体的なコメントはできない。ただ,5年などそんなに遠い先の話ではない。