基幹網とアクセス網を仲介するメトロ網の伝送装置に特化した通信機器ベンチャーの米コリジェント。創業後初の製品であるCM-100シリーズは,高速で柔軟なリング網を構築できる性能・機能を武器に,KDDIに2000台超の納入実績がある。2008年前半に次期製品を投入するコリジェントに,同製品の強みと販売戦略を聞いた。
(聞き手は高橋 秀和=日経コミュニケーション)
次期製品となるメトロ網向け伝送装置の仕様と開発状況は。
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米コリジェント・システムズ マーケティング担当副社長 ガディ・ローゼンフェルド氏 [画像のクリックで拡大表示] |
CM-100は,リング網向け伝送プロトコルの標準仕様「RPR」(resilient packet ring)に準拠した製品。物理層は問わず,SONET/SDHやイーサネット,WDM(wave division multiplexing)などさまざまなインタフェースを収容できる。パケット・ベースながら遅延やジッタの少ないリング網を構築できるのが特徴だ。
CM-4000は,CM-100の最大40Gビット/秒のバックプレーン帯域を640Gビット/秒に高めたうえで,コリジェント独自の「HC-RPR」(high-capacity RPR),「AHC-RPR」(asymmetric high-capacity RPR)という二つの機能を追加した。
独自機能のHC-RPRとAHC-RPRとはどういうものか。
まずHC-RPRは,10Gビット/秒のインタフェースから成るリングを複数束ねて最大100Gビット/秒のリングを構成する機能だ。RPRでは別ネットワークとしてしか扱えなかった追加リングを,HC-RPRでは既存リングの帯域としてシームレスに統合できる。構成変更に際してサービスを止める必要はない。
次のAHC-RPRは,非対称のリングを構成する機能だ。トラフィックの多いノード間のみインタフェース・ボードを追加し,その部分の帯域だけを拡張するといった柔軟性が得られる。HC-RPRと同様,サービスの中断は発生しない。
CM-100シリーズの販売を継続するのか。
最大40Gの帯域を持つ下位製品としてCM-4000と併売する。管理ツールは共通で,CM-100とCM-4000の統合管理が可能だ。CM-4000が持つAHC-RPRを生かすことで,CM-100のリングにCM-4000シリーズを段階的に足していける。
通信事業者以外に販売しないのか。
日本市場におけるコリジェントの強みは,何と言ってもKDDIのメトロ網に対する納入実績があること。KDDIからのフィードバックは,CM-4000の製品開発に生かされている。例えばHC-RPRは,KDDIがCM-100で構築したメトロ網でのニーズから生まれた機能だ。
顧客層は当面,NGN構築に取り組む先進的な通信事業者に絞る。日本市場に限った話ではないが,多様なサービスを雑多なアクセス網で混在させるNGNは商機になる。SONET/SDHリング網を柔軟なパケット・ネットワークに変えられるというコリジェント製品の強みが生きるからだ。
CM-4000に追加したHC-RPRとAHC-RPRはIEEE標準になるのか。
コリジェントはIEEEでRPRの策定に携わってきた。今後も標準化には積極的に参加する。HC-RPRとAHC-RPRの両仕様は,IEEEのワーキング・グループに提案済みだ。ワークキング・グループの作業リストに加えることができれば,いずれ標準化されるだろう。