2013年12月ころ、米国の金融業界がソーシャルメディアをモバイルに次ぐ重点分野として考え始めていることについて触れた(関連記事:モバイルに次ぐ重点分野に、米国金融業界で加速するソーシャル活用)。この時は銀行やクレジットカード会社が、一般顧客へのコミュニケーション手段としてソーシャルメディアを活用し始めたことに言及したが、それ以外の分野にもソーシャルメディアの活用が広がってきているようだ。

 この変化は、米American Century Investment社が毎年実施する調査「Annual Financial Professional Social Media Adoption Study」の結果からも、うかがい知ることができる。同調査は米国の約300人のフィナンシャル・アドバイザーやブローカー、投資顧問など金融商品の売買に携わるプロフェッショナルを対象にしたもので、2014年6月に第5回目となる2014年版の調査結果が発表された。調査では2010年当時と今年のソーシャルメディア活用度合いの違いについて述べているが、4年前と比較して活用度合いは増しているようだ。

 この調査によると、「SNS」と呼ばれるものを全く活用していないと回答した割合が2010年時点で27%あったが、2014年では13%までに低下している。活用しているSNSの中で最も多かったのがFacebookで全体の68%。そしてLinkedInが僅差(66%)で続いている。さらにこの4年間でTwitterが16%から33%まで伸びている。FacebookやLinkedInと合わせて活用されるようになってきた点が注目される。

 SNSが積極的に活用されてきつつあるものの、その用途の重点はどちらかというと「発信」ではなく「受信」に置かれているようだ。それは回答者たちの「ソーシャルメディアの活用目的」から顕著にみえる。活用目的として最も回答の割合が高かったのが「各分野の専門家のコメントや分析を読むため」(28%)で、続いて「業界や市場の最新情報を収集するため」(16%)、さらに同じ割合で「既存顧客、見込顧客を調査するため」となっていた。

 これらに共通しているのが、どれも情報を「発信」するというアクションが伴わないということ。金融業界の人々にとってソーシャルメディアは、主に「受信」目的で活用されていることがわかるだろう。

 この背景には、この4年間で金融のプロフェッショナルたちがマーケットの動きを読み解く上で重要と考える情報が、ソーシャルメディア上に多く流れてきていることがある。例えば各業界の第一人者や専門家たちが、自分たちの意見や考えをマスメディアを通じてだけではなく、ソーシャルメディアを使い、自らの手で発信することが増えてきたからだ。