「会社の老化」のメカニズムのうち、前回解説した「組織の不可逆性」に続いて今回解説するキーワードは「資産のジレンマ」です。

 組織としての会社が老化していく原因の一つがその「不可逆性」、つまり一方通行で後戻りできないことにありました。規則が増える一方であったり、組織が複雑化する一方であったりというのがその例でした。

 しかし不可逆性というのは必ずしも悪いことばかりではありません。会社の立ち上げ期においては、全てが個々人の裁量に任せられていたいわば「無法地帯」です。そこから抜け出し、秩序ある組織を築き上げるには規則やルールが不可欠だからです。

 同様に組織が階層化し、分権化してくるのも多人数の集団を合理的に管理するためには必須の要件とも言えます。特にまだ「若い」会社にとって、こうした段階を経て「一人前の組織」になることは、一つの目標とも言えるでしょう。

 ところがこれも程度問題です。ある一定以上に規則が増えるとそれはむしろ前回述べたように、規則も組織の複雑化も一度その方向に進み始めたら「不可逆的に」進行します。

 このように、お金や建物など、金融資産や固定資産といったいわゆる「目に見える資産」だけでなく、知的資産などの「目に見えない」会社としての財産が環境変化とともに不可逆的に「負の資産」になってしまうのが、会社の老化を進行させる構造的課題と言ってもよいでしょう。