本連載の以前の記事で、米国内の実店舗での売り上げにおいてデジタルの影響を受けたものの割合が高まっていると述べた。実際、米国内の小売業界のマーケティングでデジタル化が進んでいる。米Conversantが2013年12月に実施した調査によると、米国小売業の企業は、平均してマーケティング予算全体の38%をデジタルマーケティングに割り当てているという。

 この調査は、実店舗の有無を問わず「小売業界全般」を対象としているので、実際にはオンライン上でしか販売をしていない企業も少なからず含まれるようだ。調査結果では、19%の企業がマーケティング予算の75%以上を割り当てていたが、そのほとんどはオンライン上だけで販売をしている企業と考えられる。

 こういった企業が全体の平均を押し上げている側面もあるだろうが、これまで以上にデジタルマーケティングに予算を割く企業が増えてきたのは事実だ。冒頭に触れた、米国内の実店舗の売り上げでデジタルの影響を受けたものの割合が高まっている傾向は、小売業界全体がデジタルマーケティングに積極的に投資してきた結果ともいえる。

 消費者の購買行動に、デジタルそしてオンラインの情報が大きな影響を与えていることを物語る調査結果を、別の企業も明らかにしている。米国の小売業界を専門するマーケティング企業Interactionが5月に発表したものだ。その内容は、米国の消費者でインターネットを日ごろ使う消費者の88%は、実店舗で商品を購入する前にオンラインでの情報収集、いわゆる「ウェブルーミング(webrooming)」をしているというものだ。

 ウェブルーミングにより、消費者は「目的の商品を最安値で販売している店舗の検索(75%)」、「他の商品との比較検討(72%)」、そして「購入を検討している商品の詳細情報の収集(71%)」をしているという。最終的に購買活動が発生する場所は実店舗だが、その購買に至るまでのプロセスの大半がオンライン上で実行されていることが分かる。