トップ分析官の1冊

 著者の1人である工藤卓哉氏は、アクセンチュアで日本のデータ分析ビジネスを統括する。過去には、ブルームバーグ市長時代に、ニューヨーク市の政府統計ディレクターを務めた経験を持つなど、日本を代表するデータサイエンティストの1人といえる。

 そんな工藤氏と、アクセンチュアで数多くの分析プロジェクトを率いた保科学世氏の2人がビジネスパーソン向けにデータサイエンスを解説したのが本書。平均をはじめとした記述統計学の基礎から、高度な予測モデリングまで、統計学の一通りの理論を、数式を極力使わずに、平易に解説している。

 本書の特徴は、ビジネスへの応用を意識し、データ分析の実例を豊富に盛り込んでいることだ。例えば、多変量解析の予測モデルの実例として、ブラッド・ピットが主演した映画「マネーボール」で注目を集めたセイバーメトリクスを挙げる。

 セイバーメトリクスの理論の説明はもちろん、「この手法は驚くことに、1977年に1人の野球ファン、ビル・ジェームズが夜勤の暇つぶしに野球の試合をデータ解析したことから始まった」というような“小ネタ”も盛り込むなど、読者が興味を失わないような仕掛けも随所にちりばめられている。

 統計学の初心者から、ある程度の知識を身に付けた中級者まで、幅広いビジネスパーソンがデータサイエンスを学べる1冊。

データサイエンス超入門


データサイエンス超入門
工藤 卓哉/保科 学世 著
日経BP社発行
1680円(税込)


■同じ本の別の書評も読む