米国防省がサイバー空間を、陸・海・空・宇宙に次ぐ「第5の戦場」と定義してから、サイバー戦争についての本が巷にあふれるようになった。中には、表面的な内容にとどまる本も多いが、本書はそんな類書とは違った骨太な内容だ。著者が元新聞記者で現在もブリュッセルを拠点として世界各地を飛び回っているためか、軍需企業の幹部や軍要人の声を丹念に拾い上げ、背後に広がるサイバー戦争の実態を浮かび上がらせている。

 例えばアフガニスタン戦争では、国際治安支援軍(ISAF)によって、各国各自やNATO(北大西洋条約機構)、米国防総省などの機密ネットワークを結ぶ「アフガン・ミッション・ネットワーク」というネットワークを通じて情報を共有。アフガン各地の静止監視気球から映像が逐次送られてくるなど、このような情報共有基盤を通して作戦が遂行されているという。サイバー戦争をリアルに感じられる一冊だ。

サイバー時代の戦争


サイバー時代の戦争
谷口 長世 著
岩波書店発行
798円(税込)