ジョブズ氏の真似より己を知ろう

 「常に強みに投資している」「周囲に適切な人材を配置し、チームの力を最大限に引き出す」「フォロワーたちの欲求を知っている」――。有能なリーダーはこの3つを備えているという。一見、驚きはないように思えるが、100万回以上の調査、数十年分のデータ、2万回以上のインタビューによって判明した結果というから、その事実を重く受け止めるべきだろう。

 有能なリーダーになるため、先に挙げた3つのスキルを身につけるためのノウハウを解説しているのが本書。特に、優れたリーダーになるうえで欠かせないこととして強調しているのが、「己の才能を知る」ということである。

 「最高のリーダーを真似ても、人はついてこない」と断言し、自分の強みを知ることが先決と説く。才能や限界は人それぞれ異なるため、米アップルのスティーブ・ジョブズ氏のやり方を実践しようとしても、有能なリーダーになることは不可能ということだ。

 本書の特徴は、強みを客観的に把握する手法として「ストレングス・ファインダー」を活用している点だ。これは、教育心理学者のドナルド・クリフトン氏らが開発したオンライン才能診断システムとして知られ、世界で200万人以上が利用している。

 「戦略性」「ポジティブ」「着想」「分析志向」「社交性」「未来志向」…。ストレングス・ファインダーが定義する34の資質ごとに、人を率いる方法について勘所を説明している第4章は参考になることが多い。本書を購入すれば、無償でストレングス・ファインダーを使える。自分の強みを知り、有能なリーダーになるための近道を探ってみるのも悪くない。

ストレングスリーダーシップ


ストレングスリーダーシップ
トム・ラス/バリー・コンチー 著
田口 俊樹/加藤 万里子 訳
日本経済新聞出版社発行
1890円(税込)