農業機械の国内最大手のクボタは今、グローバル展開に全力を挙げるとともに、ビジネスの“形”を変えようとしている。国内農業の将来が不透明で農機市場の縮小が予想されるからだ。グローバル展開の要となるのが畑作の農機への本格進出。さらに、農地集約に備え農機にセンサーを取り付けて新ビジネスの可能性も探る。益本康男会長兼社長にその戦略を聞いた。

(聞き手は木村 岳史=日経コンピュータ 編集委員)

益本 康男(ますもと・やすお)
1971年3月に京都大学工学部精密工学科を卒業、同年4月に久保田鉄工(現クボタ)に入社。99年4月に宇都宮工場長、2001年10月に作業機事業部長。02年6月に取締役。03年4月に産業インフラ事業本部製造統括本部長。04年4月に常務取締役 ものづくり推進部担当、06年4月の専務取締役に就任。07年4月に水・環境・インフラ事業本部長。08年4月に取締役副社長、09年1月に代表取締役社長に就任。11年1月より代表取締役会長を兼務。1947年4月生まれの66歳。

最近特にグローバル化に力を入れ海外生産を拡充しています。

 中国、タイ、米国でこれでもかと言うほど生産を増やしていますよ。それでも、海外生産比率はまだ全体の2割強ぐらいです。今後、立ち上がったばかりの米国でのトラクター生産が軌道に乗れば、3割近くになると思います、

 とは言え、ベースはあくまでも国内です。海外生産では、海外で必要なものを造っているのであって、中国で造った製品を日本に持ってくるわけではありません。基本的に地産地消です。

日本がベースと言っても、国内市場が縮小していく中で、国内の生産拠点を維持していくことは可能ですか。逆に、円安が進んでいるので、海外生産を国内に戻すといった発想はあり得ますか。

 各国で必要なものを全部造ろうとしたら、投資が過大になりすぎる。米国の工場であっても全製品を現地で造れませんから、メインの製品は米国で造り、それ以外は日本から輸出しています。

 それにインドネシアやベトナム、ミャンマーといった新興国では、需要はまだ急には伸びないから、まずは日本で製造して現地に届ける必要があります。販売量が十分に増えて初めて、地産地消という発想になるのです。

 だから、日本に生産拠点が無くなるという話は嘘だと私は思っています。新興国などに市場を広げていけば広げていくほど、逆に日本は忙しくなるはずです。

 しかし円安だからと言って、もう一度、海外生産を国内に戻すことは考えにくいですね。