スマホファーストに舵を切るため、PC利用を原則禁止にする試みを実施したり、実際にPCを撤廃したりする企業も出てきている(関連記事:PC撤廃という決断)。

写真●PC利用を禁止したヤフーの「スマホフライデー」
写真●PC利用を禁止したヤフーの「スマホフライデー」 の様子
ヤフーは2012年11月9日、全職場でPCの利用を禁止し、スマホとタブレットのみで半日だけ業務を行う「スマホフライデー」を実施した。屋外に出てスマホで仕事をするグループもあった
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 ヤフーは2012年11月、全社員3873人を対象にPCの利用を半日間禁止するイベント「スマホフライデー」を実施した。経理部門で社外向けに急を要する支払い処理があるといった一部の例外を除き、原則として全員が参加した(写真)。

 狙いはスマホで業務を遂行する際の課題や障害を具体的に洗い出すことだ。事務局を担当したスマートフォン戦略本部事業推進室の高橋僚介室長は、「従業員から不平不満が出ることは承知の上で、あえて実施した」と語る。

 スマホだけを使ってどこまでの業務が可能で、何ができないのか。実際に不便さを体感させ、自社サービスに何が足りないかの気付きを社員一人ひとりに促す目的があった。

 実施後のアンケートでは61.7%の社員が「今後もやりたい」と回答。課題に正面からぶつかることの効果を実感している。スマホ活用の課題を具体的に探れる意味で、一般のユーザー企業にも参考になる取り組みだろう。

 一部の職種でPCを原則撤廃したのがスイスの製薬大手の日本法人、ノバルティス ファーマだ。2013年1月に、2300人のMR(医薬情報担当者)からノートPCを回収し一斉にiPadに置き換えた。日報作成や経費精算、顧客への説明など日常業務の全てをiPadでこなす。同社はグローバルでMRの端末のiPadへの切り替えを実施しており、その一環だ。

 ただし、医薬品の卸売業者へのセミナー向け講演資料作成など、どうしてもPCを必要とする業務は残る。「5人に1台の割合で社内に共有PCを新たに設置したり、仮想デスクトップのアカウントを用意したりした」(情報システム事業部マーケティング情報システム推進部の鈴木幸二部長)と、MRの不満を和らげるソフトランディング策を工夫した。