大切なのはIT職場の現場と組織のそれぞれの課題を直視することだ。「対話が少ない」と「ビジョンがない」では同じ課題でも質が異なる。明日から現場で改善できることもあれば、長期的な経営課題もある。それらを一つひとつ整理し、社員と経営陣が役割と責任の範囲を決めて、対処することが大切だ。

 「IT業界は深刻な問題を抱えており、組織風土改革を早急に進めなければ、取り返しのつかないことになる。現場と組織のどちらかの責任という話ではなく、互いにできるところから風土改革に取り組むべき」。今回の調査結果について、組織風土改革の第一人者であるスコラ・コンサルト(東京・品川)の柴田昌治氏もこう指摘する。柴田氏の過去の語録も参考にしてほしい(関連記事:悲鳴を上げるIT業界から組織風土改革の依頼が急増中)。

 この特集で紹介した“3大疾病”も、この考え方で治療しよう。「うつ・無気力」型については、現場が対話を増やすための工夫を凝らせば打開できることは多い。会社のバックアップは必要だが、経営陣に期待するよりも、現場の自主的な取り組みで事態を好転させられる。

スコラ・コンサルト 柴田 昌治氏
1986年に企業の風土や体質問題に目を向けて変革支援をするスコラ・コンサルトを設立。文化や風土といった人のありようの面から企業変革に取り組む「プロセスデザイン」という手法を結実させた。日経情報ストラテジーで連載中。著書多数。近著『どうやって社員が会社を変えたのか』(共著、日本経済新聞出版社)も話題を呼んでいる。

 「疲弊・燃え尽き」型もそうだ。長時間残業に頼らない科学的なプロジェクトマネジメント手法は、現場が自主的に導入した方が、実践的であり根付きやすい。「経営陣がシステム開発やソリューション提案営業の現場を知らない」と無知を嘆いていても現状打破は難しい。小さな単位でチームワーク力を高めることから始めるのが得策だろう(関連記事:柴田昌治「考える力」の鍛え方)。

 組織面、つまりトップを含む経営陣の責任が問われるのは、「あきらめ」型である。ここは経営陣の出番。クラウド、ビッグデータ、タブレットなどIT業界には、成長の海が広がっている。

 自社の人材と技術力を見極め、強さをどこに見いだせるか。ビジョン作りが大切だ。現場の改善と相まって成長戦略を描くことが、「あきらめ」を減らす。