前回、「日本のSEは技術偏重、ビジネス意識の薄さ、仕事に対する受身姿勢、営業に対する不満などの色々な問題を長年抱えている。だが、この問題は営業や経営者では解決できない。第一線のSEマネージャーしかいない。そのためにはSEマネージャー自身が顧客や営業・部下のSEに信頼されることが重要である」と述べた。そして、「SEマネージャーにその信頼関係がないと、顧客に体制図や人月を出さない闘いや常駐をやめる闘いはもちろん、SEの技術偏重の風潮と闘うことができなくて結局はSEが抱えている問題は解決できない」とその理由も述べた。

 さらに、「この信頼関係は決してSEの問題を解決するためにだけに必要なのではない。本来SEマネージャーが持つべきものである。そうでないとSEマネージャーの職務を全うすることはできない。だが、現実のIT業界のSEマネージャーを見ると顧客・営業・SEとの信頼関係を持っているSEマネージャーはそう多くはない。どうみても過半数はいない」と日本のSEマネージャーの在り方について問題提起もした。

 だが、SEマネージャーが顧客・営業・SEに信頼されているかどうかを判断するのは難しい。往々に主観的になり、へたをすると独りよがりの判断になりかねない。事実、SEマネージャー自身が「自分は一生懸命やっている。だから自分は信頼されている」と思っても相手から見るとそうでないこともままある。また、営業やSEや部長などは「あのSEマネージャーは顧客や営業に信頼されていると思ったのに……」ということもある。きっとこんな類のことはどこのIT企業でもトラブルが起こったときなどに良くあると思う。

 それを避けるには、SEマネージャーが信頼関係作りのために日頃どんな行動を行い、どんなことができているのか、それをベースに判断することが肝要である。そこで今回は、SEマネージャーの顧客・営業・SEとの信頼関係作りの基本的なことについて言及したい。

信頼関係は日頃の活動の積み重ね

 言うまでもないが、人間同士の信頼関係は一朝一夕にできるものではない。日頃の付き合いの積み重ねである。それはSEマネージャーもしかりである。顧客や営業・SEとの日頃の仕事上の付き合いの中で、信用されるか頼りにされるかどうかが決まる。したがって、SEマネージャーにとっての信頼関係作りは、顧客・営業・SEと日頃しっかりとした話をしているか、約束したことはきちっとしているか、困ったときには助けているか、などの積み重ねである。

 では、そのためにはSEマネージャーは日頃、最低限どんなことができなければならないのか。それは具体的には何か。

 まず、下記の「チェックリスト」を見ていただきたい。これは、筆者が現役時代に多くのSEマネージャーを見た中で、「SEマネージャーは日頃こんなことができていなければ顧客や営業・SEに信頼されない」という事項をまとめたものだ。