これまで3回にわたって技術偏重、ビジネス意識の欠如、受身の姿勢、営業に対する不満など日本のSEが抱えている問題とその背景について色々と述べて来た。そして、それを解決するには“SEマネージャーがキーである”と読者の方に訴えた。

 きっとSEマネージャーの方々は、色々な受けとめ方をされたものと思う。中には「話は分かるがそれは理想論だ。自分は忙しいからそれどころではない」と思った人、「馬場の言うことは分かった。そのためにはSEマネージャーは何をやれば良いのか」と前向きにとらえた人、「自分はそれができる自信はないが頑張ってみたい」などと刺激を受けた人など、色々だと思う。

 また、中には「顧客に体制図などを出すのは当たり前じゃないか。なぜ、そんなことを言うのか?」と問題とも思わない人もいると思う。ただ、そんな問題とも思わないSEマネージャーが多くては、顧客やSEは救われないのでそう多くないことを祈る。だが、そんな方はぜひ周りのSEマネージャーやSEや営業の方々と議論して、「自分の考えははたして本当に正しいのだろうか」と再度考えて見てほしい。

 いずれにしても、筆者は多くのSEマネージャーの方がこの問題をぜひ前向きにとらえてほしいと思う。またSEマネージャーを目指しているリーダークラスのSEの方は自分がSEマネージャーになったときのことを考えて今からその力を培ってほしい。

SEマネージャーは闘う覚悟をもて

 しかし、SEマネージャーがSEの技術偏重の風潮をなくし、体制図や人月の提示、常駐をやめることは決して容易なことではない。それは、およそこれまで多くの先輩SEマネージャーができなかったことをやることになるからだ。決して、ちょっとやそっとの工夫でできるものではない。ある意味でSEマネージャーにとっての“闘い”である。

 決してきれい事では済まない。そのためには、SEマネージャーはまず「自分はこの問題と闘うんだ。挑戦するんだ」と言う強い意思と覚悟を持つことだ。すべてそこから始まる。そして、最初に考えることが二つある。

 その一つは、「部下のSEはこんなSEになってもらいたい。自分は部下をこんなSEに育てるんだ」というSEの姿・SE像を考えることだ。そのためには、SEマネージャーは自分の経験をベースに顧客や会社が求めるSEの姿を考え、そして多くの人の意見を聞くことが重要である。独りよがりは厳禁だ。特に、SE時代に1~2件の顧客しか経験していない人は要注意だろう。筆者は、当時「顧客に信頼されビジネスに強いSEはどんなSEだろうか」を基軸に色々と考えた。その詳細は次回以降に述べる。

 もう一つは、SEマネージャーはもちろん、部下のSEが営業と販売活動を行う、販売活動を支援することを考えることが重要だ。受注後のシステム開発などだけをやれば良いと考えていてはダメだ。それは、SEマネージャーやSEが販売活動に入らないことには、体制図や人月の提示、常駐と闘えないからだ。

 第一線のSEマネージャーには、色々な立場の人がいる。営業部門の中で、営業マネージャーと共に仕事をしている人、SI専門部門で受注後のシステム開発などを行なう専門部隊の人など、色々だろう。重要なことは、営業部門の中の人もSI専門部門の人も「売るのは自分の職務ではない。販売活動をやればワークロードがかかる」などといって、販売活動から逃げないことだ。