日系企業の海外拠点の仕事を、どのようにして獲得するか---。海外ビジネスを伸ばしたい日本のIT企業にとっては、重要な課題である。日系企業のグローバル化が進むにつれて、海外拠点のシステム整備の意思決定を日本本社が担うケースが増えている。となるとIT企業も、国内外の営業部門が連携する必要が生じる。営業部門の連携強化に向けた取り組みについて、日立製作所のタイ子会社である日立アジア(タイ)でICTソリューションビジネス部門を率いる高橋秀幸ゼネラルマネジャーに聞いた。

(聞き手は大和田 尚孝=日経コンピュータ

タイで手掛けているITサービス事業の顧客構成と主力サービスは。

日立アジア(タイ) ゼネラルマネジャー 高橋秀幸氏
日立アジア(タイ) ゼネラルマネジャー 高橋秀幸氏
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 ビジネスの大半が日系企業向けだ。残りは欧米グローバル企業であり、タイの現地企業向けは少ない。いま注力しているのはERP(統合基幹業務システム)パッケージの導入関連サービスだ。独SAP、米マイクロソフト、米インフォアなどの製品を取り扱っている。生産管理システムや運用ソフト「JP1」などの導入も手掛けている。

 最近はERP導入サービスが好調だ。タイに進出する日系企業が増えているためだ。

日系企業向けの営業活動はタイ拠点が中心となって進めるのか。

 その場合もあるが、日本の営業部隊が、ユーザー企業の日本本社のIT部門から「ERPパッケージのグローバル統合」といった案件を受注するケースも多い。こうした案件を増やしていきたいと考えており、日本の営業部隊には「海外の案件も積極的に提案受注して」とお願いしている。

そうはいっても、日本の営業部隊からすると海外の仕事は規模が相対的に小さいしリスクも大きく感じる。必ずしも積極的に提案するとは限らないのでは。

 その通りだ。そうした課題を解決するために、二つの取り組みを推進してきている。

 一つは日本の営業部隊への啓蒙活動だ。グローバル案件の提案方法を指南するセミナーを日本で開いたり、営業責任者と直接話をしたりして、海外案件の受注に積極的になってもらうように促している。日本の営業部隊が海外案件を受注する際の不安を減らす目的で、「言葉の問題や海外特有の法制度、商習慣といったところは海外拠点が責任をもって対応するから心配しないで受注して」「海外ビジネスは確かに特殊ではあるけど決して難しくはない」と投げかけている。