明けましておめでとうございます。1月1日付で日経コンピュータの編集長に着任しました。昨年まで7年間在籍したITproでは、読者の皆様から本当に多くのご意見や叱咤激励を頂戴しました。心より御礼申し上げます。

 さて、東日本大震災からまもなく丸2年。先の総選挙で約3年振りに復活した自公連立政権の下で、復興と経済再建は仕切り直しとなりました。

 日本経済のデフレ基調に変化の兆しはなく、国内の人口減少と市場縮小は確実に進行しています。そうした中、企業のIT投資は2013年も、全体としては停滞ないし減速の状態が続きそうです(関連記事)。

 正月早々、暗い話ばかり聞かされたくないというお叱りの声が聞こえて来そうですが、決して悲観的な観測を述べたいわけではありません。むしろ逆です。

 日本企業にとっても、そのビジネスを支えるICT企業にとっても、2013年は真の成長に向け、腹をくくってイノベーションやグローバル化に取り組む“覚悟の年”になる。そのことを再確認したいと考えています。

 経営環境の厳しさが増し、IT投資が抑えられる中で、死活をかけたこの取り組みを前進させるためには何が必要か。

 この問いに魔法のような回答は存在しません。真の成長につながるイノベーションやグローバル化とは何かを考え抜き、ICTの力を最大限に引き出すために知恵を絞り、本当に必要と判断したシステム案件には勇気を持って投資する。当たり前でありながら容易ならざることに企業は挑まなければなりません。

 考え抜いた結果が従来の常識を捨て去ることであっても、もはや不思議ではありません。

 「顧客にとって『コンビニエンスストアが一番近い存在』という時代は終わりつつある。1万店から集まる膨大な購買データを活用して、ビジネスを「待ち」から「攻め」へと転換しなければならない」(ローソンの佐藤達 執行役員 CIO ITステーションディレクター

 「アップルのように、製品だけでなくサービスで本業の付加価値を高める発想をすれば、製造業は成長産業となる。新たなサービスを開拓するには、様々な異業種プレイヤーとの連携が欠かせない」(トヨタ自動車の友山茂樹 常務役員 事業開発本部長 IT・ITS 本部長)。

 「ビッグデータの登場で、ITがマーケティング活動の最前線で貢献できる時代がやってきた。グローバル市場では、当初から世界をターゲットにした製品やビジネスモデルが必要。国内で勝利してから世界に展開していく、という発想を捨てるべきだ」(サントリーホールディングスの下條泰利 執行役員 )。

 これらは、大手企業6社のCIO(最高情報責任者)と主要ICTベンダー8社のトップが昨夏に日本の再生と復興について議論した「ITpro EXPO ステアリングコミッティ」の全体会議での発言です。それぞれの業界で成功した企業が、自らの常識と成功体験を断ち切ってイノベーションやグローバル化に挑もうとしているのです。