一カ月ほど前に「ソーシャルメディアと米国のホリデーシーズン」というタイトルで、米国のホリデーシーズンとデジタルマーケティング的なトレンドについて紹介した。そこで「スマートフォンとタブレット向けのアプローチを強化する動きが加速する」ということについて触れてみた。その後1カ月が経ち、ホリデーシーズンに本格的に突入した米国の動きはどうなっているのだろう。

 まだホリデーシーズンの序盤戦ではあるが、既にIBMの調査によって、スマートフォンとタブレット向けのアプローチを強化するという動きが実際に見られているようだ。少なくとも米国におけるeコマース上位500サイトに対して実施した調査では、スマートフォンやタブレットなど、いわゆるスマートデバイスからのアクセスが全体の26.5%となり、前年の15.8%を大きく上回っているという状況になっている。

スマートデバイスの普及が後押し

 今年のホリデーシーズンにおけるeコマースでの消費については、IBMの調査以外にも、comScoreやForrester、そしてGartnerが予測しているが、どれも軒並み、対前年比で大きな増加となるとしている(関連記事)。その増加の一要素として、スマートデバイスによるeコマースサイトへのアクセス、そして、そこからの購買の増加が挙げられているよう。少なくとも米国におけるスマートデバイスによるeコマース消費は、かなり大きな流れになっていると言えるだろう。

 米国において、スマートデバイスによるeコマース消費が拡大している背景には、まずここ数年でのデバイスの普及自体が急速なものであることが当然大きい。

 日本にいるとあまりイメージがわかないが、これまで米国内で主に使用されていたモバイルデバイス(いわゆるフィーチャーフォン)は、デバイスそのものが非常にシンプルなもので、いわゆる物販はもちろんのこと、ゲームや音楽、あるいは電子書籍などのデジタルコンテンツさえ購入できないものが大半だった。だが、2007年にiPhoneが販売されたことをきっかけに、急速にフィーチャーフォンからスマートフォン、あるいはタブレットへのシフトが進み、普及していった。それに伴う形でユーザーの消費行動が変わってきたということになる。

 実際、今年の2月の時点で、米国内の成人の約46%がスマートフォンを所有していると言われている。6月の時点で、米国内の携帯電話保有者の半数以上がスマートフォンを所有しているという調査結果が発表された。さらに今年の8月の時点で、米国内の成人の約25%がタブレットを保有しているとの調査結果も出ている。

 つまり、5年ほど前の時点ではほぼゼロの状態だったeコマースでの消費活動に使えるデバイスが、どんどんと増加し続けてきたということだ。そして2012年の時点で、ある程度eコマース消費の動きに対して影響を与えるようになったことが、この流れを生んだ大きな理由だと言えるだろう。

 実際、聞くところによると、今年の店頭における「ブラックフライデー」(米国のホリデーシーズンの実質的な初日となる11月第4金曜日を指す言葉)のセールは、例年に比べてやや静かなものであったようだ(とはいえ大盛況であることには変わらなかったらしいが)。それは大手の小売店がeコマースに力を入れ、eコマース上でも大規模なキャンペーンやセールを行なっていたということも背景にあったようである。