まもなくハロウィンの季節となる。特にB2Cの方面のマーケティング担当にとって、この時期の最大の関心事はクリスマス、すなわち「ホリデーシーズン」なのは万国共通のものかもしれない。アメリカでは、11月末のサンクスギビングデーを過ぎると、文字通り一夜のうちに街は一気に年末商戦モードとなる。

 サンクスギビングデーの翌日は「ブラックフライデー」と呼ばれ、この日が年末商戦の初日となる。近年では、その翌週の月曜日が「サイバーマンデー」と呼ばれ、オンラインショッピング関係者にはさらに注目されている。実店舗の売り上げが週末に伸びるのに対し、オンライン上の売り上げは翌週月曜日に売上が伸びることから「サイバーマンデー」と呼ばれるようになったものだ。

 この理由として休暇明けの月曜日に、職場のインターネット回線経由でeコマースで買い物をする人々が多いからという説や、休暇中は外出して街で買い物をしたり、あるいは帰省をしていた人々が休暇が明けて家庭に戻りeコマースで買い物をするから、という説が指摘されている。

 いずれにせよB2Cの世界で、年末商戦が一番のかき入れ時であることは間違いない。そこで今回は、今年のサイバーマンデーに向けたデジタルマーケティング的なトレンドに関して、現場で感じることを解説してみよう。

スマートフォンとタブレット向けのアプローチを強化する動き

 ここ1~2年で特に感じるのは、サイバーマンデーに関するオンライン上での施策について、その実施時期が徐々に前倒しになっているということである。これは少しでもオンライン上での認知を高めるために、競合よりも早く動き出した結果ということが背景にある。

 最近はソーシャルメディア上での動きが活発になっているように思える。特に今年はスマートフォンならびにタブレットに対するアプローチを強化するような動きが非常に強く見られており、これらのデバイスに対して、ソーシャルメディアをいかに有効に活用していくかという点が問われているようだ。

 聞くところによると、アメリカではスマートフォンユーザーとタブレットユーザーの間では、eコマースの購買動向に大きな違いが見られているとのこと。具体的には、タブレットユーザーの認知から購買にいたるまでのコンバージョン率、および平均注文金額は、PCユーザーのそれとほとんど同じ傾向を見せているという。それに対し、スマートフォンユーザーについては、コンバージョン率こそ低くなるものの、平均注文金額が非常に高くなる傾向が見られているようだ。そのためマーケターたちは、スマートフォンユーザーをいかに多く集めるか、そしてコンバージョン率を上げるかを大きな課題としているらしい。

 その一方でマーケターたちは、スマートフォン上でユーザーを目的のサイト(つまり自分たちのeコマースサイト)に的確に誘導することが非常に難しいということも理解している。そのための一つのソリューションとして、ソーシャルメディアを有効に活用することを考えている。今年は、特に「eコマースと親和性が高い」と言われているPinterestが非常によく使われている。これから年末にかけて、より多くの施策が生まれてくるのではないだろうか。

 ちなみに補足すれば、彼らの間でソーシャルメディア上でのアプローチが非常に強化されているとはいえ、決してそれが現在でもメインとなっているわけではない。やはりメールやSEOといった、これまできちんと実践されてきているものが中心であり、ソーシャルメディア上でのアプローチは、あくまでもさらなる上積みを狙う形で考えられているものである。特にホリデーシーズンに関して言えば、メールをいかに効果的に使うかを重要と考えられているようだ。こうした部分できちんと土台を固めてから、ソーシャルメディア上でより大きく上積みしていくという方法が、しばらくは中心となってくるだろう。

熊村 剛輔(くまむら ごうすけ)
リーバイ・ストラウス ジャパン デジタルマーケティングマネージャー
熊村 剛輔(くまむら ごうすけ)1974年生まれ。プロミュージシャンからエンジニア、プロダクトマネージャー、オンライン媒体編集長などを経て、マイクロソフトに入社。企業サイト運営とソーシャルメディアマーケティング戦略をリードする。その後PR代理店バーソン・マーステラでリードデジタルストラテジストを務め、2011年12月よりリーバイ・ストラウス ジャパンにてデジタルマーケティングマネージャーとなる。