中堅中小企業の新興国進出支援サービスを手がけるグローバルイノベーションコンサルティング(GIC)。特にミャンマー進出支援を強みとし、同国における日系企業による全額出資子会社設立のノウハウと実績を持つのがGIC社長の岩永智之氏だ。日本のIT産業がミャンマーに注目すべき理由や同社の事業状況などを、岩永氏に聞いた。

(聞き手は宗像 誠之=日経コンピュータ



グローバルイノベーションコンサルティング社長の岩永智之氏
グローバルイノベーションコンサルティング社長の岩永智之氏

日本のIT企業がミャンマーに着目すべき理由は何か?

 オフショア開発拠点として非常に魅力があり、IT人材の活用の幅を広げられる将来性もあるからだ。特に注目すべきは、ミャンマー人の日本語習得能力の高さ、日本人に似た国民性、コスト競争力だ。日本のIT企業が国際競争力を強化していくには、大きな潜在能力を持つミャンマーのIT人材をうまく活用していくことが重要になる。

 多くの日系IT企業は、中国にオフショア開発の拠点を設けているが、徐々に人件費が高騰しつつある。中国のほかに開発拠点を作ろうとするIT企業がまず目を付けるのが、これまではベトナムだった。

 ただ、ベトナムについては既に大手の日系IT企業が開発に着手しており、中堅や中小IT企業が今から出ていっても優秀なIT人材は採用しにくい。さらにベトナム人は一般的に、日本語習得が苦手のようで、英語でのやり取りになる場合が多い。こうしたなか、ミャンマーでのオフショア開発は価格競争力に加え、日本語習得の高さと国民性の類似により、日本向けのオフショア開発に非常に適しているといえる。

 日本語の習得能力や理解力の高さと、日本人と一緒に仕事をしやすいミャンマーのIT人材の特徴は、単なるオフショア開発での活用にとどまらない。ミャンマーでは英語教育が早期から行われており、英語ができる人材も多い。いずれ、開発の上流工程もミャンマー人のIT人材に任せられるようになったり、日本語と英語ができるIT人材として日系企業の海外拠点に配置したり、付加価値の高い人材活用ができるようになるはずだ。

なぜミャンマー人は、日本語習得能力が高いのか?

 日本語とミャンマー語の文法が似ていることが大きな理由だ。具体的には、日本語とミャンマー語は語順が同じなので、単語を覚えれば文章が作りやすい。しかもミャンマー人は漢字にもあまり抵抗がないようで、日本語の「読む・書く・話す」をバランス良く習得していく。

 例えば中国人は、同じ漢字文化圏なので日本語の「読み書き」は得意だが、聞いたり話したりすることは、読み書きに比べて苦手なようだ。15カ国程度のアジアの言語と日本語との類似度合いを独自に調査したが、ミャンマーは日本語との親和性が最も高かった。

オフショア開発の拠点を設けるなど、国内IT企業によるミャンマーへの進出支援の引き合い状況は?

 日に日に多くなっている感触だ。GICでは、だいたい3カ月ごとにミャンマーへの視察ツアーを実施しているが、IT企業ではベンチャーから大手まで幅広い規模の企業が参加している。

 GICの支援により、既に2社の国内IT企業がミャンマーにオフショア開発の全額出資子会社を設立した。さらに、GICが支援した別の2社のIT企業も、ミャンマー政府にオフショア開発子会社の設立申請を済ませた。来年にも認可が下りる見込みだ。こうした具体的な成果や実績が評価され、支援サービスへの引き合いや視察ツアー参加の増加につながっているようだ。

「新興国進出支援」を打ち出しているが、ミャンマー以外での支援サービスで注力している国はどこか?

 現在はGICが最も強みを持つミャンマー進出支援を主に手がけているが、中国進出支援もサポート可能だ。

 今後は、GICとしてフィリピンにも拠点を作り、日系企業が同国へ進出する際の支援サービスも展開していく。その後も、新興国と呼ばれる国は幅広く網羅できるように、進出をサポートするサービス内容や対象エリアを順次、拡充していく方針だ。