「キャリアグレードWi-Fi」というジャンルが登場している。その言葉の通り、通信事業者の求める品質や機能を備えた無線LAN製品のことだ。元々はIPTV向けの無線ビジネスからスタートした米ラッカスワイヤレスは、干渉制御に威力を発揮する独自のアダプティブアンテナ技術を生かして、キャリアグレードWi-Fiのジャンルに進出。KDDIの公衆無線LANサービス「au Wi-Fi SPOT」の主要機器サプライヤーになるなど、今やキャリアグレードWi-Fiの代表的企業として知られるようになった。

 無線LANは通信事業者のビジネスにどのような影響を与えていくのか。同社のパワフルなCEO、セリーナ・ロー氏に話を聞いた。

(聞き手は堀越 功=日経コミュニケーション


日本におけるラッカスワイヤレスの活動状況は。

米ラッカスワイヤレス CEO(最高経営責任者) セリーナ・ロー氏
米ラッカスワイヤレス CEO(最高経営責任者) セリーナ・ロー氏
[画像のクリックで拡大表示]

 2011年にKDDIから「au Wi-Fi SPOT」向けの無線LAN機器を受注し、1年間でおよそ10万スポットものエリアを広げた。これを契機に、日本市場に本格的に参入することを決め、日本のオフィスを立ち上げた。会社設立から7年が経過してようやくだ。

 これまで私は、日本市場に投資することに二の足を踏んでいた。日本では既に米シスコや米アルバネットワークスがエンタープライズの分野で存在感を見せていたからだ。しかしモバイルインターネットによって、状況はがらりと変わった。通信事業者向けの市場が広がり、新たなプレーヤーに対する門戸が開かれた。

通信事業者にとって、無線LANの重要性が増しているように見える。

 無線LANの市場の変遷について、私はこのように考えている。まず1990年代に「ホームWi-Fi」の分野から無線LANはスタートした。ここではバッファローのような企業が市場をけん引していた。それから2000年代に入り、シスコやアルバがけん引する「エンタープライズWi-Fi」市場ができた。そして今日、エンタープライズを超えて、通信事業者向けの「キャリアグレードWi-Fi」の分野が広がりつつある。

 ホームWi-Fiのビジネスは全世界の約20億世帯を対象としていた。その後、エンタープライズWi-Fiのビジネスは、全世界の約30億人の従業員が市場のターゲットとなった。そして今日のキャリアグレードWi-Fi市場は、約60億人のモバイルユーザーがターゲットになる。このように無線LANの市場も拡大してきている。