IT業界でも、企業の吸収・合併や事業再編などが実施され、人員削減や配置転換が行われることが珍しくなくなってきた。だが、ただでさえITエンジニアは将来のキャリアに不安を抱えがちだ。実際、憂うつ感にとらわれて心身のバランスを崩してしまう人もいる。

 そこで本連載は、ITエンジニアが展望を持って日々の業務に向き合えるよう、「5年後も企業が欲しがるITエンジニアになるためのアドバイス」を示していく。転職市場の動向を踏まえたうえで、求められている人材像を明らかにし、そうなるための方策を助言する。

 リクルートキャリア(旧社名リクルートエージェント)のアドバイザーが、実際に企業の中途採用担当者や転職希望のITエンジニアと接してきた知見に基づいて、単なる技術スキルだけでなく、仕事に対する姿勢や、ビジネススキルの面も含めた「企業が求める人物像」を紹介。そして自己成長していくために「明日からできること」をアドバイスする。

 なお、本連載の趣旨は転職を奨励することではない。「人材価値を高めるアドバイス」の語り手として、中途採用に携わり実情をよく知る専門家がふさわしいと考え、執筆を依頼している。(ITpro編集部)

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 テクニカルアドバイザーの大月英照です。IT業界は、日本の産業界全体の中で見れば、雇用情勢は比較的良い業界なのですが、5年先の見通しについては必ずしも明るい話題ばかりではありません。

 実際、いち早く新たな事業を立ち上げて順調に規模を拡大する企業がある一方で、業績の立て直しに長らく苦戦していたり、ビジネスモデルの大きな変化に直面したりしているベンダーやソフト開発会社もあることは皆さんもよくご存じでしょう。そんなこともあって、ますますITエンジニアは将来のキャリアに不安を抱える傾向が強くなっているようです(関連記事)。

 しかし、そんななかでも、自分の価値を磨こうと努めているITエンジニアは転職市場でも評価が高く、自己実現のためのステップアップも果たしています。そこでこの連載では、ITエンジニアが展望を持って日々の業務に向き合い、生き抜いていくために、明日からでもできることをお伝えしていきます。

 初回である今回は、アプリケーションエンジニア(APエンジニア)の転職市場における動向と、「求められる人物像」を紹介していきたいと思います。なお、今回の解説はAPエンジニアの中でもインターネット系に重きを置いたものとなりますが、その理由も追って述べます。