中国の上海や成都、大連にBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)のサービス拠点を持つ米アクセンチュア。中でも日本向けのBPOは大連のセンターが中心となっている。中国における対日BPO市場の最新状況や同社BPOサービスの強みについて、米アクセンチュア日本法人の馬場昭文 執行役員統括本部長に聞いた。

(聞き手は宗像 誠之=日経コンピュータ



米アクセンチュア日本法人の馬場昭文 執行役員統括本部長
米アクセンチュア日本法人の馬場昭文 執行役員統括本部長

中国における三カ所のBPO拠点の役割や位置付けは同じなのか?

 三カ所それぞれで役割分担し、すみ分けている。まず大連のセンターがBPOサービスの中心だ。内訳は言えないが、三カ所の合計で1000人以上の人員を抱えている。大連には最も多くの人材を配置している。

 上海は他の都市に比べて人件費が高いが、技術や特定業務の知識を持った人材を集めやすい。このため、データ分析業務や、医療分野向けBPOなど専門技術や業務知識が必要な高付加価値型のBPOサービスをここで手がけている。

 成都は内陸部であるため、人件費が安い。さらに、競合が少ない一方で、大学はたくさんあるので、人員を大量に雇用しやすいという特徴がある。大量の人員で単純処理するBPOに適している。

中国では人件費が上がっている。

 対策として、中国の内陸部や中国以外の国でのBPOやオフショア拠点の開設は常に検討している。とはいえ、日本向けのサービス拠点という観点では、中国を超える場所がなかなか見つからないのが現状だ。

 アクセンチュアのBPOでの主力拠点である大連は、確かに人件費や物価が上がりつつある。だが、それでも日本に比べて総コストは安い。人材のスキルも上がっており、コスト管理のノウハウも蓄積されつつある。まだ大連での競争力維持は可能だ。いずれ、成都でのBPOもさらに伸びてくるだろう。

 これまで新たなBPOセンターの候補地として、タイやマレーシアなどを調査した経緯もあるが、やはり日本語ができる人材の確保が難しい。数十人の規模ならともかく、1000人規模で日本向けBPOサービス用の人員を大量に確保するのは困難だ。

今後の中国BPOのサービス強化や差異化のポイントは?

 コンサルティングも手がけるアクセンチュアとしては、より高度なBPOを手がけていくことで付加価値を出していく。より顧客の業務の中に入り込むというアプローチに加え、他では請け負いきれないほど大規模なBPO需要に対応するなど、質や規模で他社を圧倒したい。

 BPOのメリットはコスト削減だけでなく、業務の標準化や業務改革もできることにある。業務委託する前に業務プロセスのコンサルを実施し、BPOが始まってからも定期的に業務プロセスを見直して、さらに効率化やコスト削減をできるようにしているからだ。

 サービス内容もデータ分析業務や在庫削減など、コンサルをしながら顧客の経営課題とBPOを組み合わせていく手法をとっている。数百社のBPOを手がけているからこそ蓄積されている成功事例やノウハウが付加価値型BPOサービスの差異化につながる。