BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)ビジネスでは後発組のNTTデータ。企業としてシステムインテグレーションからサービスビジネスへのシフトを志向するなかで、BPOの強化にも力を注いでいる。NTTデータでBPOビジネスを手掛ける担当者に現状と将来の展望を聞いた。

(聞き手は山端 宏実=日経情報ストラテジー



NTTデータのBPOビジネスの体制を教えてほしい。

NTTデータの大石浩一郎パブリック&フィナンシャル事業推進部技術戦略推進部システム企画室部長
NTTデータの大石浩一郎パブリック&フィナンシャル事業推進部技術戦略推進部システム企画室部長
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堀川:主に法人向けはエンタープライズIT事業推進部、金融や公共向けはパブリック&フィナンシャル事業推進部、業種を問わない共通業務などはソリューション&テクノロジー事業推進部が手掛けている。

大石:NTTデータは今、サービスビジネスを伸ばそうとしている。サービスビジネスにはクラウドコンピューティングやデータセンターを中心としたITアウトソーシングがあるが、そこにBPOサービスを加えたイメージだ。

NTTデータのBPOのデリバリー拠点としては中国が中心だ。現状の拠点数や人員数はどうなっているのか。

NTTデータの堀川雅紀ソリューション&テクノロジー事業推進部BPOビジネス推進室部長
NTTデータの堀川雅紀ソリューション&テクノロジー事業推進部BPOビジネス推進室部長
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堀川:無錫と瀋陽、長春の3拠点がある。オペレーターの数では、無錫と長春を合わせて約200人、瀋陽が約1000人というのが現状だ。買収した米キーン(現・米国NTTデータ)の拠点があるインドには800人ほどいる。無錫と長春では申し込み処理やデータ入力、瀋陽では主に金融機関向けに人事給与計算や財務処理などを手掛けている。

一般的にBPOサービスを利用することで、ユーザー企業はどの程度のコスト削減が可能か。

NTTデータの布施知也パブリック&フィナンシャル事業推進部技術戦略推進部システム企画室課長
NTTデータの布施知也パブリック&フィナンシャル事業推進部技術戦略推進部システム企画室課長
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布施:2~3割ほどが相場だ。例えばBI(ビジネスインテリジェンス)ツールを使って、繁閑に応じて最適な人員配置にする仕組みを取り入れるなどすれば、4割減らせる可能性も出てくる。

 コスト削減効果を引き出すうえで頭が痛いのが人件費の上昇だ。例えば中国であれば、人件費が年10%弱上がっている。瀋陽だと最低賃金が1100元(約1万4000円)なので、それが年10%上がると、1400円ほどの上昇だ。こうした影響を最小限に抑えていくためにも、BIツールを使った仕組みなどはできるだけ早く中国に展開したい。

堀川:ある程度のコストメリットを引き出すには、データ入力で月数万件ほどの規模がないと難しい。人数であれば10~20人ぐらいだ。数人規模だとネットワークのコストがかさみ、コストメリットが出ない。

後発のNTTデータの強みは何か。

堀川:我々はBPO専業ではなく、ITの会社なので、BPOとITサービスをセットにして提供できることに強みがある。コストだけの勝負になると、BPO専業の会社と比べて競争優位を描きづらい。

 NTTデータとしてはお客様にとってコアな部分まで踏み込まないと後発として勝ち目がないと思っている。単なる事務処理だけだと市場は枯れている。コアな部分まで手掛けるのが、後発としての生きる道だという認識で動いている。

布施:これまでのビジネスで培った信用力なども競争優位になる。

金融であれば、NTTデータは「地銀共同センター」など強い顧客基盤を持つ。そこに参加する顧客にBPOサービスを提供する考えはあるのか。

大石:これから当然そういう風にしていきたい。ただ現状は企画段階で、具体的な案件に結びついてはいない。インパクトのある状態にはなっていない。

 例えば地銀共同センターが事務処理をBPOするなどの動きが出れば、それがBPOビジネスが一気に加速する1つの臨界点になり得る。

最近は東南アジア諸国連合(ASEAN)へのBPOも増えつつある。NTTデータとしてASEANにBPOのデリバリー拠点を設ける計画はあるか。

堀川:ミャンマーに可能性を感じており、すでに調査に入っている。割と日本語もできる。中国などと比べてミャンマーの人件費は圧倒的に安い。中国やインドの5分の1、ベトナムの3分の1の水準だ。

今は主に業種ごとにそれぞれの事業部門がBPOビジネスを手掛けている。BPOビジネスを一手に手掛ける横串組織を設ける可能性は。

大石:今は何がベストかを模索している段階だ。一緒になるのも検討課題ではあるが、まだ答えは出ていない。