前回は話題を変えて、東日本大震災以降に再び語られるようになってきた社内SNSについて触れてみた。クローズアップされて語られている割に、社内SNSは推進そして普及に至っているケースがそれほど多くはないのではないかと述べた。

 そして、社内SNSの効果や有効性について考えるのはもちろんだが、それ以前に、まず導入する組織における人間のマインドセットについて考えるべきだ、とあえて強調した。「自分にとって『こんな(誰でも知っているはずの)情報をシェアする必要があるのか』と感じられる情報が、実はシェアされる側にとっては非常に有益なものとなる可能性がある」という、いわゆる個々の情報共有の重要性を強く意識する必要があるからだ。

 今回は、こうしたマインドセットをもっているという点はクリアしていることを前提に、ではどうすれば社内SNSの活用が推進され、そして普及するのかについて考えてみよう。

社内SNSで陥りがちな落とし穴

 社内SNSを活用していくにあたり、多くの場合、そのきっかけは以下のとして、二つのパターンに類型化されてくるだろう。

  • 組織のトップ(または上層部)が号令をかけて全社的な利用を指示する。
  • 現場の社員、スタッフが自分たちの周りの人間を少しずつ巻き込みながら始めていく。

 つまり極端なトップダウン、あるいはボトムアップといった形に分かれる。もちろん、こういった形でのきっかけそのものが間違っているということではない。だが、その後の推進、そして普及といったことを考える際には、ぜひ注意しておきたいことがある。

 まず想定すべきことは、いずれの場合も放っておくと、往々にして利用者がごく一部のグループ、特に日頃からSNSを使い慣れてしまうユーザーに限定されてしまうということだ。しかも、この一部のSNSを使い慣れているユーザーも、最初は珍しさも手伝う形で利用頻度も高いが、時間が経つにつれてやがて放置されてしまう傾向が少なからず見られる。

 仮にトップダウンで全社的な利用を指示したとしても、実際には(初期段階で)積極的に利用するのは、日頃からSNSを使い慣れているユーザーに偏ってしまうことが多く見られるの。これは、いわゆるヘビーユーザーを核としたコミュニティが最初に生まれてしまうことを意味する。

 こういう状況になると、日頃からSNSを積極的に利用していないユーザーが、後からなかなか入りづらい結果を生み出すことにつながり、広がりを持たせることが難しくなってくる。しかも、いわゆるマネジメント層の中にSNSを積極的に利用していないユーザーが多く含まれている場合、この傾向は顕著に現れてくる。これはボトムアップな形で利用が推進されていくケースでも同様だ。

まずはマネジメント層が実際に使うことが重要

 全社的に社内SNSの活用を推進、そして普及させていくためには、まず(特に日頃SNSを使い慣れていない)マネジメント層にきちんと使ってもらうということが大切になってくる。むしろ、全社的に利用を指示する前に、こういったマネジメント層に限定されたコミュニティを社内SNSで作り、まずSNSそのものに慣れてもらう。そして、前回にも触れた「情報共有の重要性」という、社内SNSを普及させていくために重要な意識を育てていくというステップを踏まえていく必要があるだろう。

 ここできちんとした土台を形成していくには、多少時間を要するかもしれない。だが、こうした手順を取ることで、社内SNSというものが役に立つツールとして定着してくる可能性が高まるはずだ。

 以前、企業のソーシャルメディア活用の動きが高まり始めた時期に「まずマネジメント層の理解をきちんと得ること」といった議論がなされてきた。これはプラットフォームを社内SNSという形に置き換えても、基本的な部分は変わらない。社内SNSというクローズドな環境を上手く使い、まずマネジメント層が積極的に利用していくような機会を最初に踏まえた上で、全社的に拡大させていくことも一つの方法なのではないだろうか。

熊村 剛輔(くまむら ごうすけ)
リーバイ・ストラウス ジャパン デジタルマーケティングマネージャー
熊村 剛輔(くまむら ごうすけ)1974年生まれ。プロミュージシャンからエンジニア、プロダクトマネージャー、オンライン媒体編集長などを経て、マイクロソフトに入社。企業サイト運営とソーシャルメディアマーケティング戦略をリードする。その後PR代理店バーソン・マーステラでリードデジタルストラテジストを務め、2011年12月よりリーバイ・ストラウス ジャパンにてデジタルマーケティングマネージャーとなる。