スティーブ・ジョブズのプレゼンでは、販売数、売り上げ、仕様などさまざまな数字が登場します。もっとも、数千万台、数十億ダウンロードといった大きな数字を聞いても、聴衆はなかなかピンときません。ジョブズはここで数字の魔法を使います。連載9回目の今回は、1回目で紹介したプレゼンの9つの要素の中から「8 目標と数字の提示」の英語表現を紹介しましょう。

1 冒頭で注意を引く
2 経緯を報告
3 ロードマップを描く
4 敵役の登場
5 ヒーローの登場
6 デモ
7 多角的にアピールする
8 目標と数字の提示
9 効果的に締めくくる

◆数字を実感させる

Now, we are selling over 5 million songs a day. Isn't that unbelievable? That's 58 songs every second, of every minute, of every hour, of every day.

今や、1日に500万曲が売れているんだ。信じられないだろう? それって、毎日毎日、毎時間の毎分の毎秒58曲ってことだ。

MacWorld San Francisco 2007 Keynote Addressより(2007年1月9日)より

iPhone 発表時にiTunesの音楽配信ダウンロード数を「1日に500万曲が売れる」という実数の発表だけでなく、「1秒に58曲」と単位を小さくして数字を実感しやすくしています。聞き手に身近な大きさの単位への数字を言い換えることで、いっそうすごさを実感させるのです。発売200日目の売り上げを話したときにも「今まで売れたiPhone は400万台。200日で割ると1日2万台」という表現を使っています。

◆英語表現

be ... ing(数字)a day. That’s ~
1日当たり(数字)が~しています。それは(つまり)~です。

 be ~ ing と進行形を使うことで、まさに今日も「売れている」といった動きが感じられ、進行しているニュアンスが強まります。たとえばこれがWe have sold 500. なら「今までに500販売した。これからもまだ販売していく」というニュアンスに。Isn’t that unbelievable?は、That’s an incredible ~(numberなど) に置き換えるとビジネスで使いやすくなります。たとえばThat’s an incredible 50 songs a minute. などです。

◆応用例

We are selling 20,000 (twenty thousand) of our products XX per year.
わが社は製品XXを1年で2万個販売しています。

We are making 500,000(five hundred thousand) parts a year. That’s about 47,000 (forty-seven thousand) parts a month.
わが社では1年で50万個の部品を製造しています。月に4万7000個ということです。

上野 陽子(うえの・ようこ)
カナダ・オーストラリアに留学ののち、ボストン大学コミュニケーション学部修士課程でジャーナリズムを専攻。通信社の国際金融情報部、出版社にて国内海外の作家・実業家の担当、海外エージェントとの交渉や、シリコンバレー、欧米デジタルシーンの取材など経てフリーに。海外通販会社の執行役員を経て、諸媒体の翻訳・執筆・プロデュースを手掛ける。著者に、『名作映画いいとこだけの英会話』(ダイヤモンド社)、『気持ちが伝わる英会話のルールとマナー』(日本実業出版社)、『とっさに頼れるオフィスのスマート英語』(実業之日本社)ほか多数。
スペースアルクにて、バイリンガルで日本を楽しむ『日本のキホン』好評連載中!