聞き手を魅了し続けてきたスティーブ・ジョブズのプレゼンには、定型とも言える流れとストーリーがあります。『スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン』の著者であるカーマイン・ガロ氏は、このテクニックを自著の中で明らかにしています。ジョブズのこのストーリー構成を意識してプレゼンを組み立てると、説得力のある生き生きとした英語のプレゼンができあがります。

 ただし、日本語でも、ストーリーのあるプレゼンを作るのは難しいものです。ましてや英語でのプレゼンとなると、何と言えばよいのかと戸惑う方も多いでしょう。そこで『スティーブ・ジョブズに学ぶ英語プレゼン』連載では、最初にスティーブ・ジョブズの英語プレゼンのストーリーの流れを9つに解剖。さらに、それぞれの中でジョブズが実際にどのような英語を使って話していたのか、50の英語表現で紹介しました。この連載では、ダイジェストで大きな流れと9つの表現を紹介していきましょう。

写真撮影:三井公一

冒頭で注意を引き、プレゼンのロードマップを描く

 スティーブ・ジョブズの数々のプレゼンを解剖すると、次の9つの要素で構成されていることがわかります。

1 冒頭で注意を引く
2 経緯を報告
3 ロードマップを描く
4 敵役の登場
5 ヒーローの登場
6 デモ
7 多角的にアピールする
8 目標と数字の提示
9 効果的に締めくくる

 それぞれについて、簡単に紹介していきましょう。

1 冒頭で注意を引く

 ジョブズのプレゼンは、最初のあいさつから始まります。登場と同時にGood morning. Good afternoon. などのあいさつをして、聞き手に話しかけるようにしてプレゼンを始め、相手を引き込んでいきます。ここで、プレゼンターの印象が決まります。

2 経緯を報告

 次にジョブズは、インパクトのある業績や実績を紹介していきます。プレゼンの冒頭で、「iTunesで音楽販売数がこれほど売れている」「iPodやiPhoneなどの製品が売れている」といった目覚ましい数字やワクワクするような話が次々と出てくるので、聞き手はそのあとのプレゼンをますます聞きたくなっていきます。

 たとえばiPhone発表のときには、飛躍的に伸びたiTunesやiPodの販売実績を発表しました。これは会社自体のアピールだけではなく、その後に発表するiPhoneへの期待も高めています。そんな場面を盛り上げるのは、「世界一」や「業界最先端の」(industry-leading)といった英語表現です。

3 ロードマップを描く

 経緯の報告が終わったら、いよいよ本題に入ります。ジョブズは、この先どんな話が展開されていくのか、聞き手に押さえてほしいポイントを最初に整理して伝えます。英語では、書くときも話すときもまずは結論から始めます。そのため、「今日は何が目的か・結論は何か」をなるべく先に伝えてから細かい説明に入るほうが、英語の思考方法にも相性がいいのです。この冒頭で伝える結論のピッチは1分程度までが効果的です。

 全体像を描いたら、そこからプレゼン全体を3シーンで構成したり、新製品の魅力を3点のポイントに絞ったりするなど、「3」という数字での展開にこだわります。それぞれの説明の中では、聞き手の記憶に残るヘッドラインを繰り返します。このヘッドラインが、最終的な結論になり、全体を支える背骨にもなるのです。