中国でのBPOを手掛ける日系企業の老舗がインフォデリバだ。参入が増えている日系IT企業との競合に加え、米系や中国、インドのBPO事業者とどう差異化していくのか、同社の伊藤嘉邦副社長に聞いた。

(聞き手は宗像 誠之=日経コンピュータ



BPOへの参入事業者が増えている。

インフォデリバの伊藤嘉邦 副社長
インフォデリバの伊藤嘉邦 副社長
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 生き残るためには、既存の強みを持つ業界での需要の深堀りと、新規の業界に水平的に顧客を広げる二通りの戦略が必要になる。

 これまでインフォデリバは、銀行や保険、クレジットカード、証券といった金融向けのBPOに強みを持っていた。今後は、これら業界向けBPOにおける単純な業務受託から、より顧客の業務に踏み込んで受託できるようにする必要がある。

 新規分野ではヘルスケアに注目した。イーピーエスと組み、同分野でのBPOに参入した。製薬会社向けの治験管理や、病院向けの事務処理受託などをBPOで手掛けていく。その業界に強い企業と組むことで、見込み顧客と営業チャネルを確保できる。今後も他分野で同じように提携を通じてBPO受託の可能性を広げてたい。

日本のBPO事業者と、米系など外資のBPO事業者はどちらが脅威か?

 特にベンチマークしているのは、米系のBPO事業者だ。具体的には米IBMとアクセンチュア、ジェンパクトの動向は注視している。

 ジェンパクトは世界のBPOの老舗企業で、多くのノウハウを持つ。IBMやアクセンチュアも、日系BPO事業者に比べ、早期に中国でのBPOを始めており、日本のグローバル企業からも受注実績が多いからだ。

 一方で、最近になり参入してきた日系のBPO事業者は、データ入力など付加価値が低いBPO受託にとどまっている事業者が多いと感じている。

 中国のBPO事業者は、どちらかというとオフショア開発の延長としてBPOも受託しようとしているので、まだBPO専業の我が社には業務処理のノウハウなどで及ばない。

 BPOは、事業を手掛けてきた期間の長さが、人材の経験を増やすことになり、サービスの品質や効率化に直結する。我が社では、現地スタッフや幹部が育っており、ノウハウも蓄積されてきた。一朝一夕では、この差をひっくり返すことは無理だ。

今後の目標は?

 中国でのBPOを、日本企業の共通インフラと言えるような位置付けにしていきたい。そうすれば、自然と我が社の成長につながっていく。

 これまでは、「中国で日本語のデータ入力ができるのか」という半身半疑の顧客が多かったが、今はそのようなことはなくなっている。単純な事務処理では、日本でも中国でも変わりなく処理できるようになっている。

 金融を中心にBPOを手掛けてきたが、ヘルスケアに加え、流通や通販などにBPOを広げたい。これら業界では多くの顧客情報を抱えて、細かな事務処理が大量に発生する。BPOの潜在的な需要があると考えている。まだ伸びる余地が大きい。