小規模なプロジェクトの予算を見積もるとき、PMOを参画させるためにコストを割いているだろうか。規模が小さいほど削られがちな“管理工数”だが、小規模プロジェクトに合ったPMOの生かし方がある。PMOを必要とするのは規模の大きなプロジェクトという先入観を持たずに、プロジェクトの本当の成功のためにPMOの参画を検討してみてはいかがだろうか。

小林 慶志郎
マネジメントソリューションズ


 大規模プロジェクトならともかく、小規模なプロジェクトにPMOなんていらない――。そんな声が聞こえてきそうですが、本当にそうでしょうか。小規模プロジェクトには“小規模だからこそ”の難しさがあるはずです。

 イメージを合わせるために、ここでは小規模プロジェクトを50人月以内、プロジェクトメンバーは最大でも15人程度としましょう。

 これくらいの規模だと、予算の確保が難しいことも原因になりますが、「プロジェクトマネジャー(PM)が全体の状況を把握できる」とか、「PMOの役割はリーダーが兼任すれば十分」などと言われて、PMOの参画のためにコストを割かないケースが少なくないと思います。

PMやリーダーは実作業やレビューで結構忙しい

 ただ、そうしたプロジェクトの実態は、事前の見通しとかけ離れてしまいやすいものです。PMやリーダーがプレイングマネジャーとなっており、実作業やレビューなどに多くの時間を取られてしまうからです。業務やシステムに詳しい人がPM兼リーダーの役割を担うケースが多いためでしょう。結果的にマネジメントにかける時間はほとんどなくなり、WBSはメンテナンスされず、課題は期限を過ぎ、徐々にメンバーのコントロールが効かなくなっていきます。

 規模が小さいため、メンバーの踏ん張り(残業や休日出勤など)により、結果的にはスケジュールに間に合わせることができるかもしれません。しかし、メンバーのモチベーション低下や疲弊を招いたとしたら、プロジェクトとして本当に成功したとは言えません。

 そんな状況を変えるのに必要なのはPMOの役割です。プレイングマネジャーとなっているPMやリーダーに代わって、プロジェクト全体の状況把握をはじめ、スケジュールの管理や課題・リスクの把握、対応を推進していくことが必要です。

PMOに求められるオールラウンダー性

 とはいえ、こうした状況では、PMOにもある程度のスキルが求められます。PMO側の視点で考えると、プロジェクトに人数が少ない分、オールラウンダーとして雑多な仕事の処理も求められますし、プロジェクト内で発生する課題や問題、悩み、相談事をいったんすべて受け止め、適切な負荷とスキルを見極めてPMやメンバーにタスクを振り分け、時には自分で解決していく必要があります。

 「第77回 新任PMOが悩むPMOの立ち位置(1)」の中で、『(PMOが課題・問題を)「拾うこと」と「自分でやること」はイコールでない』と述べましたが、小規模プロジェクトではある程度「自分でやること」も増やしていく必要があります。

 もちろん、PMOとしてやるべきことを見失い、メンバーの作業支援を始めてしまっては元も子もありません。自分のコントロールも含めて、適切なタスクの振り分けが必要になります。PMOが「メンバーの一人」になってしまったら意味がないのです。

 このように、PMOには「なんでもやる覚悟」と、その一方で「メンバーの忙しさに引きずられない強さ」が必要となります。

プロジェクトマネジャーとPMOの役割分担

 これらを考慮し、小規模プロジェクトで効率的にPMOを活用するためには、次の2点がポイントになります。

(1)PMOが得意とする分野(マネジメント面)をPMOに徹底的に任せること。
(2)PMやリーダーは、自分たちが得意とする分野(業務面など)に集中しながら、マネジメントの要点のみをPMOを通じて押さえ、意思決定をしていくこと。

 役割分担を明確にした適材適所の考えのもと、PMOをアサインすることで、プロジェクトを成功に導ける確率は上がるのではないでしょうか。規模に関わらず、PMOを生かす方法はあるのです。


小林 慶志郎(こばやし けいしろう)
マネジメントソリューションズ
 法政大学経営学部卒業後、大和総研に入社。システムエンジニアとして、大手通信事業会社の基幹系システムの基本設計から開発、保守に携わる。2008年、マネジメントソリューションズに入社。PMOソリューションの開発や各種プロジェクトでのPMO業務に従事している。2008年、中小企業診断士登録。連絡先は info@mgmtsol.co.jp