初めてPMO(プロジェクトマネジメントオフィス)という立場でプロジェクトに着任した時、皆さんはどのようなことに悩み、どのように解決しただろうか。今回はPMIフォーラムにて講演した内容を基に、今までPMOをやったことのない人がPMOとして着任した際に、どんなことに悩み、どのように解決していったのかをお伝えしたい。

後藤 年成
マネジメントソリューションズ 取締役 PMP


 皆さんは、PMOとは何をすべき存在だと思いますか。もちろんプロジェクト管理ですが、プロジェクト管理といっても内容はさまざまです。進捗管理、課題管理から、標準化の定着・導入、“コミュニケーションハブ”としての役割、プロジェクトマネジャーの補佐、はたまた、プロジェクトの事務局から火消し役までいろいろです。PMBOKにもPMOの記載はありますが、これといってこの仕事をしなさいと定義されたものではありません。この点がPMOをやっていくうえで一番悩む点ではないでしょうか。

PMOとして仕事の壁を作らないという意識が重要

 ここで、私がPMOの心得の1つとしていつも大切にしていることがあります。それは「プロジェクトの成功のためならば、必要な仕事・役割は何でも拾う」というスタンスです。

 皆さんは、「それではPMOは何でも屋じゃないか。PMOに何でも持って来られたら、忙しくなりすぎて、まともにこなすことなんてできない!」と思うかもしれません。ここで重要なポイントは、「拾うこと」と「自分でやること」はイコールでない、という点です。

 PMOに何かしら困りごとが持ち込まれたとき、PMOがとるべきアクションにはいくつか選択肢があります。「自分でやる」「サポートする」、または「そのタスクの適任者を見つけて説得し、仕事を割り振る」などです。PMOはこれらのアクションを通してプロジェクトの成功に貢献するわけです。

OJTを行う上での重要ポイント

 「プロジェクトの成功のためならば、必要な仕事・役割は何でも拾う」というスタンスでPMOとして仕事をしていく場合、新任PMOに対してOJTで教育する時に気を付けていることが2つあります。

(1)プロジェクトの成功のためには何が必要かを常に自問自答できる人材を育てる
(2)プロジェクトの成功を未来から現在に向かって見たときに「何が足りないのか」を見抜く力を養う

 そのためにはある程度の経験はもちろん必要ですが、「今はこのプロジェクトには何が必要だと思う?」というような問いかけをこまめに行い、新任PMOが自ら気付きを得られるように仕向けることを心がけています。

 実際のところ、最初は何回言っても理解してもらうのが難しいかもしれません。しかし、1カ月、2カ月と根気強く、口酸っぱく問いかけていくうちに、新任PMOも普段からのそのような視点でプロジェクトを見る癖がだんだん身に付いていきます。そのような癖が身に付いてしまえば、PMOとしての成長は格段に速いものとなるでしょう。