前回は、プロジェクトを成功に導くうえで“何か足りないもの”があるとすれば、それをどのようにつかめばよいのかを具体的に見てきた。今回は、新任PMOが陥りやすい失敗パターンについて考えていきたい。

後藤 年成
マネジメントソリューションズ 取締役 PMP


 PMOの実行サービスを提供してきた様々な経験から、新任PMOが着任した際にうまく立ち回れず、失敗してしまう事例をしばしば見てきました。これらの多くの失敗事例を分析していく中で、新任PMOが陥りやすい失敗パターンとしては大きく分けて4つに分類できます(図1)。

図1●新任PMOが陥りやすい4つの失敗パターン
図1●新任PMOが陥りやすい4つの失敗パターン

 新任PMOが最初に当たる壁としては、多くの場合、このどれかのパターンに当てはまるのではないでしょうか。また、複数の失敗パターンに同時に陥る人もいます。これらのパターンを事前に知ることで、失敗の罠に入り込まないよう、事前に手を打ちことを考えてみましょう。

パターン(1)食べ過ぎ消化不良型

 まず最初は、食べ過ぎ消化不良型です。このパターンにはまってしまう方が圧倒的に多い、ということが分かっています。簡単に言ってしまえば、PMOというもの自体が何をすべきか十分に理解できていないため、とにかく手当たり次第に何でも手を出してしまい、負荷に耐え切れず自滅してしまうというパターンです。

 特にPMOという機能が定着していない現場では、現場の方々もPMOが何をやるのか分かっていません。そのため、「とりあえず困ったら何でもPMOに振ってしまえ」という風潮になっている現場をよく見てきました。

 ここでのアドバイスとしては、PMOとしてタスクに優先順位を付け、かつ、本当に自分がやるべきことなのかを自問自答してみることです。もしくは、PMOとしての有識者が交通整理をしてあげることが大切です。

 筆者が今まで経験してきたプロジェクトで、PMOが一杯いっぱいになっているプロジェクトはほとんどうまくいっていません。逆に、PMOに少し余裕がある状態(つまり、緊急時にPMOが主体的に行動できる余裕がある状態)だと、うまくいっているプロジェクトが多いということが言えます。PMOは、いつも100%の負荷状況にあるのではなく、少し余裕を持つぐらいのスタンスで臨むことが肝心です。プロジェクトの成功のために、“今”何が一番重要なのかを考え、タスクを取捨選択できるようになると、食べ過ぎ消化不良型に陥ることを防げるようになると思います。

 そのためにもマネジメント層は、最初にプロジェクトメンバーに対して「PMOは何でもやってくれる」というような過度な期待を抱かせないように配慮しなければなりません。PMOの負荷(PMOへの期待値)を適切にコントロールすることは、新任PMOを支援するために重要なポイントとなってくるのです。