日本の企業が中国企業との協業を円滑に進めるポイントは、どんなところにあるのか。中国語学習システムを開発・販売するWEICの経営者として中国ビジネスに精通し、現地に幅広い人脈を持つ内山雄輝 社長に聞いた。

(聞き手は宗像 誠之=日経コンピュータ



写真●WEICの内山雄輝社長
写真●WEICの内山雄輝社長

中国企業との協業で日本企業が気をつけるべき点は。

 相手のペースに巻き込まれないことだ。中国人は歴史的に異民族との戦いに慣れており、交渉がうまい。

 中国企業はなぜ日本企業と組もうとしているのか。その意図を、日本企業はよく考えたほうがいい。中国企業が欲しいのは、日本のシステム開発などのノウハウだ。それを手に入れて、中国で新しいビジネスモデルを作りたいと思っている。「ギブ・アンド・テイク」が前提の国なので、相手が望むものを与えられる限りは、見返りも期待できる。

 ただし、与えるものがなくなったときに、関係がガラリと変わる可能性はある。日本企業は技術力を磨き続けるなど、緊張感を持って付き合う必要がある。

中国企業に模倣品を作られることを警戒する日本企業は多い。

 時間がたてば何でも模倣されると心得て事業を進めたほうがよい。高度なリバースエンジニアリングの能力など、模倣のための技術力を持つ人は中国に山ほどいる。

 中国人は基本的に商人。安く仕入れて、高く売ろうとする発想があり、コツコツと研究開発をして製品やソリューションの質を高めようとする日本人とは発想が根本的に異なる点も、付き合う上で頭に入れておくべきだ。

 模倣されない対策の一つは、業界に影響力を持つ大手企業と資本提携などでガッチリと組むことだ。

 中国はWTO(世界貿易機構)に加盟している。大手企業は政府の監視もあり、おいそれとは模倣品を作れない。業界下位の企業が大手を恐れて、大手と組む日本企業の模倣品を作りにくくなるというメリットも得られる。

日本企業の中国展開では今後、何が課題になりそうか。

 主に二つある。一つは、中国事業を現場で切り盛りする人材の確保と、日本側で中国事業を統括する人材の育成だ。

 現地法人のトップを日本のことが分かる中国人に任せるのは当たり前。重要なのは、その現地トップに権限を与えつつも日本の本社からしっかりと管理できる日本人幹部だ。この人材が足りず、すべてが現地任せになっている企業は多い。

 二つめはブランド力。メンツにこだわる中国人は、車や携帯電話など身に付けるものや使っているもののブランドを重視する。それを自分が所有することで、どれだけ他人と差異化できるのかという点をうまく訴求できなければ、モノやサービスを売りにくい。

 企業向けの製品では、「その分野で有名な企業が売っている製品かどうか」、「どのような有名企業が使っている製品なのか」という点が、重要なポイントになる。

 中国では、実体のあるハードウエア製品に比べると目に見えないものは売りにくい。ソフトやソリューション、ITサービスの販売では、さらにこのブランド力が必要になる。