ワードクラウドなどで顧客の声を開示
住友信託銀行

 第4回の住友生命保険の事例で見たように、ITをうまく活用すれば、広範囲に見える化しても、膨大な情報を短時間で分析できる。また、KPIの管理対象に従来は取得できなかったデータを取り込んだり、現場で改善しやすいよう見せ方を工夫したりといった効果も期待できる。

 顧客満足(CS)向上活動にITを採り入れ、顧客の声の分類方法を見直し、現場で活用しやすくしたのが住友信託銀行だ。コールセンターに寄せられた年間20万件を超える顧客の声をCS推進部に集約。その情報を55の支店や商品開発など本部の部門に伝え、CS向上に役立てようとした。

 しかし「店・部ごとに生の声をフィードバックしていたので、現場では大量の情報を消化しきれないことがあった」とCS推進部の松本守雄部長は話す。一方で経営陣には、「お褒めの声とお叱りの声の比率」「業務別に分類した意見の件数」といったサマリーデータを開示したものの、要約し過ぎて具体的な問題点が分かりにくかった。

キーワードマップで問題の真因探る

 そこで2009年9月からテキストマイニングツールを活用している。それぞれの声に含まれるキーワードを抽出して類似する意見を束ね、「お客さまの声ポータル」と呼ぶイントラネット上のサイトで閲覧できる仕組みを作った。

 キーワードの中で出現頻度が多いものが一目で分かるよう、「ワードクラウド」という表示の仕組みも採用した(図1)。プラスアルファ・コンサルティングが提供するクラウド型のテキストマイニングサービス「見える化エンジン」を利用したものだ。出現頻度が多いものほど大きな文字で表示されるので、直感的に重要な意見を判別できる。キーワードをクリックすると個別の生の声も参照できる。「店・部ごとに分析結果を表示し、他店の状況も閲覧できる」とポータル(玄関)サイトを運用するCS推進部企画推進室の寺井望浩調査役は話す。

図1●住友信託銀行は、ITを活用して見える化の「粒度」を変えた
図1●住友信託銀行は、ITを活用して見える化の「粒度」を変えた
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 ワードクラウドに加えて、キーワード同士の関連の強さを図示するマップも自動生成する。これを見れば、顧客の苦情や称賛が、どのような経緯で発生したかを推測することも可能だという。「例えばマップ上で『待ち時間』というキーワードが『案内』『間違い』というキーワードと強く関連していれば、ロビーの案内担当者が間違った窓口に案内したことに対する不満が多いと解釈できる。『待ち時間』についての苦情が多いと、すぐ接遇カウンターでの処理の遅さが原因と決めつけてしまいがちだが、的確な原因発見と改善に結びつけられる」(寺井調査役)

 ポータルサイトの内容を拡充して注目度を高めるよう努める。顧客の声に基づいて業務改善した店・部の事例を紹介したり、マーケティングやCS推進で実績を上げた社外の識者へのインタビュー記事を掲載したりしている。