スマホを自動車に載せ走るだけで道路の損傷の情報を収集
<大賞>BumpRecorder
作者:スマートドライブメーター製作委員会

「人は、人とつながるために移動する。道路は人と人をつなぐ重要な要素」---A3 Togetherの決勝プレゼンテーションに登壇した八木浩一氏(スマートドライブメーター製作委員会 発起人・代表)は、このように「道」の意義から語り始めた。A3 Togetherの「アプリ/Webサービス賞」部門の最終選考をへて、「大賞」と「シリコンバレー特別賞」を受賞した「BumpRecorder」は、スマートフォンで道路の段差を測定し、共有するアプリである。すなわち災害時の道路の損害状況をドライバー皆で収集し把握することができる。
東日本大震災の後、自動車道の隆起、陥没、段差などがあちこちに生じた。路面の検査は、従来は目視で確認するか、専用の機械を使う必要があり、大きなコストが発生していた。一方「BumpRecorderは、スマートフォンをダッシュボードに置いて走るだけ。非常に簡単です」と八木氏は説明する。しかも、測定した情報はただちに共有できる。路面の情報を計測する手段として「抜群の手軽さ、抜群の速報性」(八木氏)を特徴とする。
BumpRecorderの動作はシンプルだ。スマートフォンの加速度センサーとGPSの機能を応用して路面の段差を検出し、位置情報と共に記録する。その記録は、Webサイトの上でいつでも閲覧できる。実際、同アプリのホームページには、世界各地のユーザーが測定した道路の段差の記録が蓄積されつつある。世界中にユーザーがおり、約50%は米国、日本は約25%だ。
動作はシンプルだが、その内部には工夫がある。加速度センサーの出力には、段差の情報だけでなく、自動車の車速の変更など他の要因に基づく情報が混ざっているため、的確に段差を検出するには独自の解析ロジックが必要だった。アプリは現在ベータ版(バージョンb3.3)の段階ではあるが、「2回走って同じ位置に凹凸を検出している。再現性が高い」と八木氏は自信を見せる。
アプリの着想は、2004年の中越地震でのことだ。八木氏が学生を過ごした「第2の故郷」である新潟が被災し、何か貢献できる事はないか、と模索しているうちに出来上がったのが、このアプリだった。「しかし、大震災の復興、救助には間に合わなかった」と八木氏は受賞時のスピーチで率直に語る。
今後の機能追加として、蓄積された段差の情報を元に、段差で揺れる前に警告する機能を考えている。「(仙台に来く途中に通った)国道4号線などで、まだ多くの段差が残っている。トラックを運んで商品を運ぶ際、段差の振動で外装パッケージが擦れることが、返品の原因となることもある。こうしたことを減らし、復興の一助となれるよう、予告機能を開発リリースしていきたい」と八木氏は抱負を語る。