ITベンダーにて
ダメな“システム屋”の会話 若手“システム屋” 「先輩、開発・稼働状況の月次統計、見ましたか?」
先輩“システム屋” 「見たけど、どうかした?」
若手 「Aシステムはユーザーからの改善要望が急増していて、大変なことになっているのではないですか?」
先輩 「Aシステムのログイン数や利用者数、利用時間も見たかな?」
若手 「え?」
先輩 「Aシステムが急激に普及して利用されているのであれば、改善要望が増えて当たり前かもしれないぞ。逆に使われないシステムには改善要望は来ないだろう」
若手 「あ、なるほど。でもうちの部のスケジュール遅延プロジェクト数が3で、過去最高ですよ。これはまずくないですか?」
先輩 「スケジュール遅延は良くない話だけど、うちの部はそもそも新規プロジェクトの絶対数が多いからな。うちの部の総プロジェクト数はいくつになっているかな?」
若手 「12もありますね、こりゃすごいや」
先輩 「隣の部は?」
若手 「3しかありませんね、それなのに遅延が2つある。あっ、こりゃひどいや」
先輩 「遅延の中身はどうだろうか。1日遅れでも遅延は遅延、2週間遅れでも同じく遅延」
若手 「あ、そうか。遅延の度合いによって深刻さが全然違いますね」
先輩 「スケジュール遅延は無い方が良いに決まっているけど、『いくつのプロジェクトのうち、いくつが遅延しているのか』と『各プロジェクトの遅延がどの程度なのか』が重要だよね」
若手 「そうですね、分母は何か、どの数字を見るかが重要なんですね」

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ダメな理由:数字のウソを見抜けない

 前回(第58回)は、日本人がインド人に比べて、「定義」が苦手だということを書きました。今回も、数字の定義について書いてみたいと思います。

 私が高校生の時の英語の教科書に「Figures can lie」というタイトルのセクションがありました。直訳すれば「数字はウソをつくことができる」という意味になります。「何だろう」と思ったことから、今でも内容が印象に残っています。(教科書の名前は、確か英オックスフォード大学出版局が出していた外国人向け英語学習テキスト『Oxford Progressive English Course Book Three Second Edition』でした)

 英国の新聞の投書欄に女性読者から「男性ドライバーの事故の多さ」を指摘する投稿があり、商用のドライバーは「女性がやったほうが良い」と主張していました。運転免許証の発行総数は男女でほぼ同数なのに、交通事故を起こしたドライバーの数は男性が女性の5倍もいる。従って、交通事故を減らすには、商用自動車などの運転手にもっと女性を起用すべきだ、という主張でした。