金融担当大臣の「延期」発言を受けて、日本企業へのIFRS(国際会計基準)適用のロードマップは不透明になったものの、IFRS対応の準備を進める企業は多い。その際に、情報システムや業務プロセス関連の対応を懸念点として挙げる企業が多い。

 6月末に自見庄三郎金融担当大臣が、日本企業に対するIFRS(国際会計基準)適用の方針を見直すと表明、適用時期は早くて2017年3月期以降となった。この発言を受けて、当初計画を変更せずに対応プロジェクトを進める企業がある一方で、「プロジェクト計画を遅らせたい」と考える企業も少なくない。

 前回(44%の企業が「対応を遅らせる」(前編))見たように、金融担当大臣の発言を受けて「対応を遅らせる」企業は44.4%あった。一方で、29.6%は「変更なし」と回答した。

 今後の方針を決めかねている企業もあるようだ。「今年度内は予算を確保している関係もあってIFRS対応を進めが、来年度については迷っている企業が多い」と、IFRS対応支援サービスを提供するプライスウォーターハウスクーパースの鹿島章IFRSプロジェクト室リーダーは話す。

 プロジェクトを完全に「止める」とした企業は、約100社ある同社の顧客のなかで「4分の1程度」と鹿島リーダーはみる。

情報システムの変更が懸念

 先行きは不透明だが、ある時点でIFRSは適用になるというのが大方の見方だ。対応を遅らせたとしても、準備は続ける必要がある。

図●IFRS対応に関する懸念事項
図●IFRS対応に関する懸念事項
「情報システムや業務プロセス関連の変更」を挙げる企業が多い
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 その際に懸念材料となりそうなのは、情報システムや業務プロセス関連の対応だ。東京商工リサーチの調査では「IFRS対応に関する懸念事項」として、「IFRSに対応できるようなシステムやプロセスの変更」を59.1%が挙げている()。IFRS対応のなかでもシステムやプロセスの変更は多くの社員がかかわるため、手間も時間もかかる。17年3月期に適用が始まる場合でも、比較期間を考慮すると、15年4月には準備を整えておくのが理想的だ。

 日本企業に対するIFRS適用に関する議論の結論がいつ出るのかは、まだ見えない。金融庁での議論の行方に目を配りつつ、プロジェクトを完全に止めるのではなく、着実に準備を進めることが欠かせない。