上場企業の9割弱がIFRS(国際会計基準)対応について、何らかの検討を始めている。一方で金融担当大臣の「延期」発言を受けて、半数弱の企業が対応を遅らせる計画である---。日本企業へのIFRS適用のロードマップが不透明になるなか、複数の調査から企業のIFRS対応の現状が明らかになった。

 6月末に自見庄三郎金融担当大臣が、日本企業に対するIFRS(国際会計基準)適用の方針を見直すと表明、適用時期は早くて2017年3月期以降となった。

 その後も金融庁での審議は進展せず、IFRSへの対応を進めていた企業にとって不透明な状況が続く。当初計画を変更せずに対応プロジェクトを進める企業がある一方で、「プロジェクト計画を遅らせたい」と考える企業も少なくないようだ。

多くの企業がまだ初期段階

 そもそも日本企業はどの程度、IFRS対応を進めているのか。東京商工リサーチが8月10日に発表した「IFRS適用に関するアンケート調査」によると、IFRS対応について検討を開始している上場企業は85.3%に上ることが判明した。

 とはいえ、多くはIFRS対応の初期段階にとどまっているようだ。東京商工リサーチの調査では「事前調査・勉強段階」とした企業が全体の58.5%に達する。

 同時期に公表された別の調査でも、初期段階の企業が多いことが分かる。IFRSコンソーシアムが8月19日に公開した調査「緊急IFRSサーベイ」では、「プロジェクト計画の策定」や「自社グループへの影響と課題調査」「IFRS導入ロードマップを策定」に取り組む企業が目立つ(左)。

図●IFRS対応を進める企業の状況
図●IFRS対応を進める企業の状況
金融担当大臣による適用延期の表明を受け、IFRS対応を進めている企業の44.4%が対応を遅らせると回答した
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 IFRSコンソーシアムは、会計関連の資格取得を支援するアビタスが事務局を務め、IFRS対応に関心がある大手企業が参加する有償の組織だ。IFRS対応に積極的な企業が多いにもかかわらず、実際の対応作業である「新会計方針、業務プロセスの導入」や「情報システムの改修、導入」に着手している企業は共に1社だった。

「変更なし」も30%

 IFRSコンソーシアムの調査によると、金融担当大臣の発言を受けて「対応を遅らせる」企業は44.4%あった。一方で、29.6%は「変更なし」と回答した(図右)。

 「対応を遅らせる」と回答した企業は、「準備期間が延長になる分を有効に使いたい」といった意見を述べている。「任意(早期)適用は考えていないので遅らせる」とした意見も複数あった。

 「変更なし」とした企業の意見は、「IFRSをベースとしたグループ統一の会計方針導入が目的であり、強制適用時期とは関係なく、任意適用したいと考えている」といった積極的なものから、「元から17年3月期を想定していた」といったものまで様々だった。