ビジネスへのICT利活用、その成功のカギを握るのは「人」である。情報システム部員には、単なるシステム構築や運用の担当者ではなく、業務課題の解決役としての役割が期待されている。本連載の最終回は、前回に続き、ICT利活用の課題と情報システム部門の役割について見ていく。

ビジネスとICTを結ぶ人材の不足を46%が指摘

 ビジネスにICTを活用するにあたっての最大の課題は人材不足である。今回の調査によると、「ICTとビジネス上のテーマを結びつけて考えられる人材が、社内に少ない/いない」を回答者の46.0%が挙げた(図13)。「十分なICT投資ができていない」(39.3%)を上回り、ICT利活用の課題として最も多かった。

図13●ICT利活用における課題
図13●ICT利活用における課題
最大の課題は、ICTとビジネスを結ぶ人材の不足

 人材不足の問題は企業規模によらず存在する。従業員1000人以上の大企業だけでなく、中堅・中小企業においても4割台に上った。また、回答者の立場によらず課題と認識されている。とりわけ経営系部門の回答者では54.0%が課題として指摘した。

ICT企画業務のアウトソーシングにも関心あり

 人材不足に対して考えられる一つの解決策はアウトソーシングの利用である。「ビジネス上のテーマに対してICTをどのように活用するかの企画業務」に関するアウトソーシングの実施や意向を尋ねたところ、現状の実施率は13%あまりにとどまったのに対して、「検討中」あるいは「関心がある」を合わせると24%強に上った。ICTにおけるアウトソーシングはこれまでシステムの開発・保守・運用作業を中心に進んできた。しかし、ICTの企画作業においても外部のリソースを活用することにユーザーは一定の関心がある。

システム部門に「業務コンサルタント」を期待

 しかし、すべての企業において、アウトソーシングだけでICT利活用の課題を解決できるわけではない。情報システム部員をはじめ社員の更なる活躍に対する期待感がある。

 今回の調査では、ビジネスとICT利活用に関連する5種類の人材像を提示し、そうした人材が今後どのような部署、組織から出てくることを期待するかを尋ねた。情報システム部門からの登場が多く期待されたのは、「システムエンジニア的人材」の74.6%。加えて、「サービスインテグレータ的人材」(46.7%)や「業務コンサルタント的人材」(40.5%)を期待する回答も4割台に上った(図14)。情報システム部門には、業務要件をICTで実現するシステムエンジニアにとどまらず、コンサルタントなどとして業務課題を解決していく役割が期待されている。

図14●情報システム部門から登場が期待される人材
図14●情報システム部門から登場が期待される人材
「システムエンジニア」だけでなく「業務コンサルタント」のような役割も期待されている