ここからは、日経BPコンサルティングが実施したもう1種類の調査「ビジネスとICTの利活用に関する調査」の結果を掲載する。連載第1回第2回の「レガシー問題」と第3回からの「利活用」。一見遠く離れているようだが、情報システムの将来を左右するという点では同じく見過ごせないテーマだ。足元のレガシー問題の重要性は述べてきたとおりだが、企業競争力のあるシステムを作り上げるには、ビジネスとICTの関係についても深く考える必要がある。

 情報システム部員だけでなく経営層や業務部門の勤務者も対象にしたICT利活用調査から明らかになったのは、ビジネスの様々な領域やプロセスにおいてICT利活用への期待感が大きいこと。業務効率化やコスト削減の「守り」だけでなく、事業拡大や新たな関係構築といった「攻め」の領域への関心度が高い。ビジネス・プロセスの視点から見れば、ビジネスの企画から評価に至るいずれの段階においてもICTに対する期待感がある。しかも、それは単なるシステム構築・運用の側面ではなく業務を支援する存在としてのICTだ。

効率化/コスト削減から、事業拡大/関係構築へ

 ICTの利活用分野は、「守り」中心から「攻め」も含めた領域へと拡大傾向にある。ICTの利活用テーマに関して、これまで実施してきたものと今後推進を期待したいものを尋ねた結果が図10である。これまで実施してきたのは、「業務プロセスの効率化」(40.7%)を筆頭に、「コスト削減」「社内コミュニケーションの活性化」がトップ3。いずれもビジネスにおける守り、あるいは社内活動に対する支援というべき分野である。

図10●ビジネス上のテーマに対するICTの利活用状況<br>今後はICTの利活用範囲が拡大。攻めのビジネス・テーマにも期待
図10●ビジネス上のテーマに対するICTの利活用状況
今後はICTの利活用範囲が拡大。攻めのビジネス・テーマにも期待
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 これに対して、今後は「事業や経営判断の高速化」「営業力強化」をはじめ、事業拡大を中心とした攻めのテーマ、社外との関係を支援する部分への期待が大きい。「ソーシャルメディア等を使った顧客との新たな関係構築」といった新たな分野や、「ビジネス領域の拡大/業際市場への進出」といった先送りにされがちな分野にも、今後はICTを使っていきたいとの意識がある。

 ソーシャルメディアを使った関係構築は、これまでの13.7%に対して、今後のICT利活用への期待は39.5%に上る。コスト削減の今後の期待率(39.8%)と並ぶ水準だ。ビジネス領域の拡大/業際市場への進出も、従来は10.8%しかICT利活用に取り組んでこなかったが、今後は30.5%と約3倍である。