ユーザー企業の情報システム部門にて
ダメな“システム屋”の会話 中堅“システム屋”A 「業界トップのあの企業についてだけど、雑誌に新システム構築の記事が出ていたな」
中堅“システム屋”B 「見た見た。これで何度目かな?」
A 「それに比べて我が社の情報システムの古さと言ったら」
B 「だって我々が入社した時には、もう既に今の情報システムが動いていたでしょう」
A 「そうそう。だから我々は新システムを構築した経験がないよね。メンテナンスのみ」
B 「メンテ、メンテでもう10年以上だよ!」
A 「新規システム、やりたいよねー」
B 「もちろん。それにうちの企業、こんな古いシステムをそのまま使っていていいのかって思うよね」
A 「そうそう、絶対に再構築するべきだよ」
B 「なんでしないんだろうね」
A 「そりゃあ、部長が反対しているからでしょ」
B 「というと?」
A 「再構築して失敗したら、同じ雑誌の『動かないコンピュータ』とかで取り上げられかねない。部長のクビが飛ぶ」
B 「何もしなけりゃ?」
A 「おとがめなし。減点法だから、失敗がなければOKなんじゃない?」
B 「そうかー、嫌になっちゃうなー」
A 「若手だってつまんないだろうなあ、メンテばっかりじゃ
B 「おい若手、どうだ、基幹情報システムの再構築したいだろ?」
若手“システム屋” 「したいかどうかというよりも、どうなんでしょうか、当社の事業環境では再構築すべきなんでしょうか。先輩たちはどう考えますか?」
中堅A&B 「え?」

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ダメな理由:やりたいかどうかで決めるな

 ユーザー企業が基幹情報システムの再構築を実行するかどうかは、“システム屋”がやりたいかどうかで決めるべきものではありません。ところが世の中には、再構築をしたくてしたくてたまらない“システム屋”がいるかと思えば、絶対に着手したくないという“システム屋”もいます。

 “システム屋”のうち多数派は、新しい情報システムを作りたくてたまりません。情報システムを、企業が事業を推進するための手段ではなく、それ自体が目的であるかのように考えているからでしょうか。一方、少数派ではありますが、一切作りたくないという人もいます。大規模な再構築・新規構築はできるだけ避けて、現状維持で、平穏無事に会社員人生を過ごしたいという人です。

 言うまでもなく、本来、情報システムの再構築・新規構築は、「やりたいかどうか」ではなく「すべきかどうか」で判断しなければなりません。民間企業であれば、市場や自社の状況によって判断するべきです。官公庁であれば、費用対効果や住民サービスの品質などを手がかりに考えるべきでしょう。決して「5年ごとに自動的に再構築する」ようなものではありませんし、予算があるからといって考えなしに企画するものでもありません。