ITベンダー社内にて、“システム屋”同士の会話
ダメな“システム屋”の会話 論理思考力に自信がある“システム屋”A 「我々“システム屋”にとって重要な素養って何だと思う?」
技術に強い“システム屋”B 「やっぱり技術なんじゃない?」
弁舌さわやかな“システム屋”C 「私はコミュニケーション能力が一番大事だと痛感しています」
A 「なるほどね、でも僕は論理的な思考能力が最重要だと思うな」
B 「いや、色々重要なことはあるだろうけど、技術がなければお客様・ユーザー側と渡り合えないでしょ、やっぱり」
C 「いやいや、ユーザーと何か揉めるとすれば大抵の場合、コミュニケーション能力の問題だと思います」
A 「いやいやいやしかし、トラブルの最大の原因は論理的思考能力の欠如だったり、考慮漏れとかにあったりするんじゃないのか?」
B 「あ、先輩だ、ちょっと聞いてみようよ。先輩!」
先輩“システム屋” 「ん、どうした?」
B 「先輩は“システム屋”にとって最も重要な素養って何だと思いますか?」
先輩 「そうだな、色々あるけど・・・」
B 「やっぱり技術じゃないですか?業務知識でも計画立案でもユーザーには勝てませんから、技術で勝つしかないと思うんです」
先輩 「確かに技術は必須だな。というよりも、技術に詳しくない者が“システム屋”を名乗るのは難しいね」
C 「先輩、やっぱり技術より重要なのはコミュニケーション能力ですよね?」
先輩 「それも必須ではあるな。“システム屋”以前の問題かもしれないが」
A 「論理的な思考能力が最も重要だと僕は思います」
先輩 「ふむ、それも必須だ。だけどな、もう1つ、我々“システム屋”に必須な能力があるだろう?」
A&B&C 「えっ、もう1つ?」
先輩 「相手の立場に立って考える能力というか、姿勢が必須だろう」
A&B&C 「相手というとユーザーのことですか?」
先輩 「そうだな、ユーザーが中心だけど、ユーザー企業の中でも起案する担当者、投資を決裁する経営者、社内で情報システムを使う人、その先にいる顧客企業のお客様など様々な人がいるだろう」
A&B&C 「なるほど」
先輩 「ユーザーだけではなく、プロジェクトの中の同僚や仲間たち、あるいは上司も含むかもしれない。相手の立場に立って考える能力に欠ける“システム屋”ほど、『使われないシステム』を作ってしまったり、採用されない提案を書いてしまったり。誰も付いて来ない“評論家”になってしまうね」
A&B&C 「そうですね。僕らはそうならないようにしないと」

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ダメな理由:天上天下唯我独尊

 “システム屋”にとって、顧客・ユーザー企業への提案コンペやプレゼンテーションは仕事の一部です。提案コンペなどで、「これが当社の特長だ」と力を込めて作った提案書が採用されないと「なんでウチの良さが理解できないのだ!」と憤慨する“システム屋”がいます。あるいは、コスト削減の提案をして採用されないと「確かにコストは下がっているだろう、引き算もできないのか!」などと相手をののしる“システム屋”がいます。

 彼・彼女らには提案を受ける人、決裁をする人の立場で考える姿勢が欠如しています。これではダメな“システム屋”だと言われても仕方ありません。

 提案コンペでは、複数のITベンダーが同じ条件で提案内容を競い合います。提案を受ける側の顧客は各社の提案を並べて、長所・短所比較表を作るはずです。ただし、どの観点を重視して選ぶかは、その時々によって違うはずです。価格、時間、体制、システムの品質、分かりやすさ、拡張性、あるいは提案企業の安心感、スピード感。様々な選定基準の中から何を重視して判断するかを予想してみるといいでしょう。