IT業界でプロとして活躍するには何が必要か。ダメな“システム屋”にならないためにはどうするべきか。“システム屋”歴30年を自任する筆者が経験者の立場から、ダメな“システム屋”の行動様式を辛口で指摘しつつ、そこからの脱却法を分かりやすく解説する。(毎週月曜日更新、編集:日経情報ストラテジー)

若手A 「もちろん見ましたよ」
若手B 「早朝に生中継で見て、録画で見て、ニュース番組で見て、動画サイトでも見まくっていますよ」
大先輩 「延長での澤選手の同点ゴールはBクイックだったね」
若手A 「は?」
大先輩 「PK戦で最初のシュートを止めた海堀選手の横っ跳び、あれは回転レシーブだ」
若手B 「はい?」
大先輩 「なんだ君たち知らないのか、東洋の魔女を」
若手A 「何ですか、それ?」
大先輩 「女子バレーボール日本代表、1964年東京オリンピック金メダル!」
若手B 「それは知りませんよ。私、まだ生まれていませんでしたし」
大先輩 「いやー、当時の女子バレー日本代表も、なでしこジャパンと同じで、体格や身体能力の差を補って余りある技術と戦術を身に付けていたんだよ」
若手A 「へえ、そうだったんですか」
大先輩 「そこで君たち、“システム屋”として、なでしこジャパンから学ぶことって何かないの?」
若手B 「え?身体能力を補う技術や戦略ですか」
若手A 「他とは違う勝ち方を考えるってことですか」
大先輩 「そうだね。じゃあ、“システム屋”としてはどうすれば、基礎能力で上回る競合他社に勝てるようになるかな?」
若手B 「うーん、当社が独自の戦略を生かすためにITで何ができるかを考えるべきですね」
大先輩 「その通り。なんだやればできるじゃないか、回転レシーブ!」
若手A&B 「・・・(回転レシーブってなんかすごそうだけど、古すぎ)・・・」
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ダメな理由:基礎能力が低いと諦める
スポーツの戦略、特にチームスポーツの戦略やマネジメントがビジネスにも応用できるというのは、よく聞く話です。スポーツ界で名監督や名将と呼ばれる人の著作は、ビジネスパーソンの間でもよく読まれています。
サッカーの2011年女子ワールドカップ(W杯)ドイツ大会で初優勝を遂げた日本代表チーム「なでしこジャパン」は、その粘り強さとさわやかさで我々に元気を分けてくれました。さらに、他国とは違うそのサッカースタイルも国内外から注目を集めました。
優勝候補であった米国やドイツの選手たちは、男子並みの体格と身体能力を誇る選手ばかりで、パワーとスピードで相手を圧倒しようとしました。日本代表だけがそれとは異なり、局面ごとに数的有利を作る粘り強い走りと機敏な動きをベースに、細かく速いパス回しで相手を翻弄するスタイルでした。
こうしたチームのスタイルは、「相手がドイツだからこうしよう」とか「後半、相手が疲れてきたからこうしよう」と考えてできるものではありません。いつでもそういうスタイルで戦えるように日頃から練習しておく必要があります。それ以前に「日本女子サッカーをこういうスタイルで強化しよう」という大きな意味での戦略が、優勝という成果につながったのだと思います。