IT業界でプロとして活躍するには何が必要か。ダメな“システム屋”にならないためにはどうするべきか。“システム屋”歴30年を自任する筆者が経験者の立場から、ダメな“システム屋”の行動様式を辛口で指摘しつつ、そこからの脱却法を分かりやすく解説する。(毎週月曜日更新、編集:日経情報ストラテジー

ITベンダー社内にて、若手と先輩の雑談
ダメな“システム屋”の会話 若手“システム屋” 「先輩!テレビで見たんですが、中国人はすごいですよね」
ダメな先輩“システム屋” 「ん、何が?」
若手 「朝の7時前に、大学の中庭でみんな英語の音読をやっているんですよ!」
ダメ 「早起きだっていう話か?」
若手 「・・・それより、外国語を学ぼうという強い意欲に感心しましたよ。あと、韓国の受験戦争もすごいですね」
ダメ 「韓国は大学が不足しているからだろう」
若手 「・・・そうですか。あとベトナム人は米国の名門大学で優秀な成績を収めているという話も聞きましたよ」
ダメ 「ベトナム戦争終わったからな。米国にリベンジにでも行ったのかね」
若手 「・・・ともあれ、もっとすごいのはインド人ですよね」
ダメ 「人口がすごく多いということか」
若手 「・・・そうじゃなくて、CMMI(能力成熟度モデル統合、関連記事)のレベル5はインド企業だらけですよね?」
ダメ 「妙に凝り性だということか」
若手 「・・・何を言っているんですか、ウチの会社なんてレベル3を申請中ですよ」
ダメ 「ま、とにかく、日本はGDP(国内総生産)世界2位の実力があるからな」
若手 「・・・あれ、GDPは中国に抜かれましたよね?」
ダメ 「あ、そうだった。それでも日本人は過酷な受験戦争を勝ち抜いているから優秀だよ」
若手 「・・・韓国の受験戦争の方がすごくないですか?」
ダメ 「ま、そうかな。でもほら、米国など海外への留学生数は日本人が世界一だろう?」
若手 「・・・いや、数は減りつつあるようですし、ベトナム人などの活躍の方が世界的には話題になっていますよ」
ダメ 「あ、そうか。でもな、数学力は日本が世界一だろう」
若手 「・・・インドよりも優秀でしたっけ?」
ダメ 「ま、でもな、日本人の“システム屋”は世界一給料が高い。知ってたか?」
若手 「・・・それは日本の“システム屋”が一番人件費が高いということですよね?」
ダメ 「あ、そうとも言うけどな」
若手 「・・・(なんかこの人、日本が一番と信じ込んでいるというか、日本以外に無関心というか)・・・」

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ダメな理由:「日本が一番」と信じて疑わない

 前回(第43回)は「“システム屋”の海外出張が大名行列になってはいけない」と指摘しました。今回も“システム屋”がもっと海外に目を向けるべきだという指摘を続けたいと思います。

 日本の“システム屋”はもっと世界に目を向けるべきです。世界に目を向ければ、中国やインド、ベトナムといった新興国の勢いや、欧米先進国の挑戦など、“システム屋”にとって新鮮な刺激であふれています。

 しかし、日本で“システム屋”生活を長らく過ごしたり、年齢を重ねたりするうちに、感受性は鈍ってきます。上のエピソードで登場するダメ先輩は極端な例ですが、この業界で、環境変化に気付きにくくなっている人や組織は少なくないでしょう。