ウイングアークテクノロジーズは2010年夏、中国でBIソフトの本格販売を開始した。2011年4月にはタイ市場に参入し、他の東南アジア諸国へ販路を広げる計画だ。ウイングアークの内野社長に足元の販売状況や、今後の展開を聞いた。

(聞き手は宗像 誠之=日経コンピュータ


ウイングアークテクノロジーズの内野弘幸社長
ウイングアークテクノロジーズの内野弘幸社長

中国での販売開始から約1年が経過した。

 日本市場と同様に、製造業や流通を中心とした中堅企業をメインに営業をかけている。手ごたえを感じる一方で、さらなる販売や成長の加速に向けての課題もあり、新たなシカケ作りが必要と改めて感じている段階だ。

 手ごたえは二つある。一つは、BIソフト「Dr.Sum EA」が中国企業向けに追加の機能開発をしなくても売れるということが分かったこと。中国語版は言語メッセージを中国語に変えているだけで、日本語版と機能的には変わらない。追加の開発コストがかからないため効率的だ。

もう一つの手ごたえとは?

 中国で今まさしくBIソフトの需要が高まっている、という仮説通りの市場環境を確認できたことだ。

 中国ではここ数年で、大手だけではなく中堅企業でもERP(統合基幹業務システム)ソフトの導入が進み始めている。中堅では現地ソフト会社のERPの導入が増えており、様々な業務データが蓄積されている。

 BIソフトは、こうした蓄積されたデータを使い需要予測や実績管理などができる。ERP導入だけでなく、ITを使って競争力を高めようとする中国企業は、どう経営データを活用すべきか考え始めており、そういった企業が興味を持ってくれている。BIソフトの需要が大きくなり始めているタイミングでの参入につながった。

販売の加速に向けた課題とは?

 直販を地道に続けて、現在は10社程度の現地企業から受注した。「中国のこういう企業が実際に使っている」と、実績をアピールする売り方ができるようになったのは大きい。だが、こうした直販ではアプローチできる企業に限りがある。顧客数を大きく伸ばしたり、有力な販売会社と組んだりするためにも、顧客から引き合いがくるようなブランド力が必要だ。

 そのためには、ブランド力や認知度が高い中国企業と提携することが重要だと考えている。単なる業務提携ではなく、資本提携や合弁事業も視野に入れる。

 提携先を通じ、製品のOEM(相手先ブランドによる供給)提供も考える。現地システム会社のソリューションに組み込んでもらえれば、導入の機会は格段に増えるだろう。

 中国は国土が広く、大都市が分散しているため、エリアごとにその地域で強い企業を組んでいく必要だ。

国産ソフト会社として評価される部分はあるか?

 日本では当たり前のサポートでも、中国では驚きをもって喜ばれる。製品販売におけるていねいな説明や導入時のサポート、稼働後の不具合の対応の速さなど、日本のサービス品質の高さは評価される。

 したがって、一度でも国産ソフトを使ってもらえれば、現地企業は機能や品質だけでなくサービスの手厚さを特に評価して、長く製品を使い続けるはずだと確信している。

東南アジアでの今後の展開は?

 東南アジアでは、国ごとに有力パートナーを作っていく。まずタイ市場に参入した。ここでは、現地のシステム会社ではなく、日系の丸紅情報システムズをパートナーとした。現地企業と日系企業の両方に売り込んでいく。まずBIソフトの英語版を売るが、需要を見ながらタイ語版の開発も検討する。

 このほか、シンガポールやインド、インドネシア、オーストラリアで、現場パートナーの選定を進める計画だ。